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椎名もフィリスも。
恋なのだと気づくにはあまりにも幼すぎて。
その想いはあまりにも、純粋すぎて。
離れたくはない。離したくはない。
ただひとつの願いが呪文のように繰り返される。
世界のすべてが崩れ落ち、お互いだけがすべてになる。
時が止まってしまえばいい。
人界で読まれる安っぽい恋愛小説に目を通すたび、フィリスはそんな馬鹿なと一笑にふしていた。
時は止まらない。確実に着実に流れていくもの。
つまらぬ幻想だと。
だが、これは何としたことだろう。
自分はいま、そうあってほしいと望んでいる。
指先のぬくもり。ずっと感じていたいと望んでいる。
どんなに願っても、決してありえぬと知っていながら……。
椎名とともにありたいと、望んでいる。
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