第三章 1 出会い

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これは何という気持ち?何という名を持つ感情? その答えは榛色の瞳にあった。 そう。 初心なふたりに恋の始まりを告げたのは、互いの瞳に宿りし言葉。 そこには、偽りなき真実の想いがあった。 真摯な真摯な想いがあった。 熱を帯びる二対の瞳。 一途な想いを互いの瞳に宿らせて、見交わす瞳。 愛しい――――。 そこで初めて、自分たちが引き返せない恋に落ちたことを悟った。 「あなたの名を」 椎名の甘く促す声音。 ああ。出逢ったばかりだというのに、なんと心を振るわせる響きであることか! 愛しさが堰を切ったように溢れだす。 それでも胸を占める不安。 横たわる現実の重みにフィリスはまた、泣きたくなる。
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