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「おはよ~」
「あ、志保おはよう!聞いた!?例の痴漢犯が捕まったんだって!」
次の日の朝、緋桜が教室に入って来たのと同時にクラスメートである平原綾が走って来た。
緋桜と小学校からの付き合いな為に一番話せる相手と考えて間違いない。そして彼女こそが緋桜に痴漢に関しての相談をした人物である。
「えっ、本当!?良かったじゃん綾!これからは安心して電車に乗れるね!」
「ねぇ……志保なんかした?」
平原の言葉に緋桜は肩を跳ねさせる事も顔に出す訳でもなく、淡々と、
「そんな訳ないじゃん!私に何が出来るのさ?」
その言葉に平原が何かを言おうとしたのと同時に、
『1年2組、緋桜志保さん。森先生の所に来てください。繰り返します―――』
「ありゃ、呼び出しだ。行ってくるね」
「ん、行ってらっしゃい」
校内放送に呼び出された緋桜を平原は手を振って見送る。
廊下に出た緋桜は人知れずにちょっと安心した様にため息をつき、それと同時に前を向くと丁度犬神が登校して来たところだった。
「丁度良いところにいた!犬神ちょっとついて来て!」
相変わらず眠そうな表情を浮かべていた犬神だったが、緋桜のいきなりの言葉にも文句一つ言わずについて行く。
そして職員室に二人が入ると、
「おい緋桜!こっちだ!」
二人が目を向けた先にはボサボサ頭でメガネをかけ、無精髭を生やした男性が立ち上がって手を振っていた。
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