29人が本棚に入れています
本棚に追加
「森先生呼んだ―?」
「呼んだ?じゃねぇよ馬鹿。テメェまた囮捜査しやがったな?」
明るく尋ねる緋桜に森はその頭と顎をガシッと掴んで、他の先生に見えない様にしゃがませて低い声で脅す様に言う。
「なっ……何故それを……」
「警察から直々に電話が来たっつーの!お宅の生徒さんが痴漢を逮捕したってな。ウチの他の被害者も全員ソイツの犯行だったってよ」
焦った様子で尋ねる緋桜に森は頭と顎を締め付ける力を強めながら言う。
この男性、森貴義は緋桜と犬神のクラス、1年2組の担任の先生であり担当教科は数学。生徒に対しておちゃらけながらも平等の立場として話してくれる為、生徒からの人望は厚い。
そして森が言った〝また〟というのは緋桜は過去に引ったくり犯を2人捕まえているのだ。今回の様にわざと引ったくりに会う様な道などを選んで。
そして引ったくりが荷物を掴んだ瞬間に、昔習っていた空手の経験を生かして犯人を倒したのだ。
本来なら表彰状などがあるのだが、本人が断った為に無しになりこの学校内でも知る人は極少数となっていた。
「そっか……良かった」
「良くねーよ!危うく逆に訴えられそうだったらしいじゃねぇか!」
その言葉に緋桜は言葉をつまらせ、余計な事を!と思ったが言えるはずも無い。
「う"……そ、それはまぁ…仕方ないというか」
「仕方なくねー!」
ずっと緋桜と森が話し続けているので犬神はもう帰っても良いかなと思い始めていた。
最初のコメントを投稿しよう!