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「ほれ、授業だから行くぞ」
むー、と自分の説明が気に入らないのか膨れっ面をしている緋桜に森がちょいちょいと手招きする。
「でも誘うのは私の自由だよね?」
「好きにしろ。第一アイツが調べたがるかどうかにもよると思うけどな」
隣を歩きながら口を尖らせて言う緋桜に森は少し含み笑いをしながら言う。
「アイツが誰かに命令されて何かを調べるなんて見た事ねぇな。アイツは〝興味〟が有るものだけを調べる」
森の言葉に緋桜は何でそんなに犬神の事を知っている様に話すのか、不思議だったが緋桜はのらりくらりと避わされると思い、聞くのを止めた。
「う―っす。ホームルーム始めっぞ―」
森が頭をガリガリとかきながら入ると、森に「おはよータカセン」と声を掛けてくる者もいれば、未だに友達と話している者もいた。
「んじゃ出席取るぞ、犬神はいるなー、上田―…」
「先生、犬神は居ませんよ?」
当たり前の様に出席を取っていた森に学級委員長の平原が答える。
「なっ……緋桜、お前図書室行ってこい」
「え、何で私?ってか図書室?」
「お前が巻き込んだんだ。お前が迎えに行け」
森は驚いた表情になったが直ぐにニヤリと笑い、緋桜に言う。
「あの馬鹿はきっと図書室だ、行ってみりゃ分かる」
森はニヤリと口の端を吊り上げる笑いの表情のまま、立ち上がって教室を出る緋桜を見送った。
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