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「レーネ、他にも知っていることがあったら教えて欲しい。ノアが探しにいったあの仕掛けのこととか」
《知ってはいても古い記憶を思い出すのは大変なのよ。魔界にきたのも久しぶりのことだし、魔石を研究している者がいるかは定かじゃないわ。私はここにいて、天空から見下ろしているわけでもないのだから。
…あの部屋は古い古い記憶の中、人間と私たち精霊が力を合わせて作った人界と魔界を隔てる扉。あれを動かすことができたのなら、人界に魔界の者が入ることはできなくなる。魔界に人界の者が入ることもできなくなるわ》
オレはその仕掛けと参謀と魔物の親玉らしきグランディーネのことを考える。
「…無理に戦って命を削るよりわけて暮らせばいい…って考えは甘い?」
《できることならそうしたいものね。ただ、それも簡単なことではないわ。グランディーネという魔界の王がいる限り。今は眠りについているようだけど、目覚めたら扉を閉めることに抵抗してくるでしょう》
…目覚める…らしいし。
また眠らせるか、倒すか、それまでに扉を閉めるか。
いや、その前に魔石についてここで調べるべきか。
そんなことをしている余裕はあるのか。
さっさと扉を閉めてしまうべきなのか。
「…何を優先させればいいかわからない」
オレは迷った末にレーネに甘えるように聞いていた。
《あなたには仲間がこんなにもいるわ。一人で何もかもしようとしなくていいのよ》
「わかってはいるけど…、オレがしたいことを優先してもいいのか…」
《足踏みしていても時間は過ぎていくのよ。あなたの腕の中にも仲間はいるでしょう?話し合ってあなたが歩く道を見つけなさい》
レーネはそんな言葉を残して姿を消して。
オレは腕の中のキャルの頭を撫でて、少しだけ離れて顔を見てみた。
キャルはもう泣いてはいなかった。
その目がオレを見ると、妙にドキドキして視線の行き場がない。
「グランディーネの様子を探るのと、扉や鍵について調べるのと、魔石について調べるのと、3つくらいにわかれたらいいのかな?」
キャルはオレの鼓動なんてまったくわかっている様子もなく聞いてくれる。
微妙に不満。
でも今はのんびりいちゃついてはいられない。
わかってはいるけど。
…なんでオレ、こんなのに惚れてしまったんだろ。
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