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目が覚めると、オレはベッドの上に横になっていた。
ひどく悪い夢をみたような気がする。
白い天井をぼんやりと眺めて、自分の手を目の前にかざして。
生きている…?
怪我一つない体。けれどまだ少し痛みが残る。
あれは……あの夢は……やっぱり現実だった。
別に…誰かのために何かをしようと思ったわけじゃない。
ただ、あの時……。
突然、窓ガラスを突き破り、教室に現れた魔物。
体格は2mほどの筋骨隆々と言わんばかりのもので、背中に3つの黒い蝙蝠の羽のようなものを生やしていた。
その鋭い目は教室の中にいたオレたちを見てニヤリと笑う。
誰かの悲鳴と逃げ出す足音。
魔物は逃げ出そうとするクラスメートの前へと瞬時に移動すると、その頭を鷲掴み、その握力で頭蓋骨ごと破壊した。
飛び散った血液に更に悲鳴をあげるクラスの女。
魔物は悪魔だった。
容赦なく次々とクラスメートの命を奪い、その牙で食い散らかしていく。
オレは悲鳴もあげられなかった。
今まで、学校にこんな強い魔物はきたことがない。
今までなら、オレが見よう見真似で戦って追い払った。
けど……、こんなの……。
「ライっ。何してんだよっ。早くやっつけろよっ」
ガタガタ震えて机の下に隠れたクラスメートがオレに声をかけてくる。
「やっつけろって……。無茶だろっ。オレは騎士でもなんでもないんだぞっ?おまえと同じただの学生だっ」
オレは思わずそのクラスメートへと怒鳴るように声をあげた。
「いつものおまえなら、なんとかしてくれるじゃないかっ」
人任せもいいもんだ。
オレに頼るなと言いたい。
オレは震えて怯える自分の体を軽く叩いて、足元に落ちていた木片を拾い上げた。
たぶん、あの魔物が壊した机か椅子の破片だろう。
じゅうぶん、木刀がわりにはなってくれるはずだ。
魔物は教室の中央で暴れまくってくれている。
目の前で……人が殺されるのはもうたくさんだ。
なんでこんなときに王国の騎士団はすぐに駆け付けてくれないっ?
オレは手にした木片でこちらに背中を向けている魔物へと殴りかかった。
誰も助けてくれないのなら…、自分でなんとかするものだ。
誰に教えられたか、オレの中にはそんな言葉が浮かんでいた。
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