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女が泣いたときにどうすればいいのか、はっきり言ってわからなくて。
前にティンカーベルが言ったとおりにしたつもりで。
でもこれがオレにとってはファーストキスとも言えるものだったりする。
何かがまちがった気がする。
妹を泣き止ませるように頭を撫でるくらいでよかったような気がする。
こんな場所なのに、オレの鼓動は高鳴ってしまっている。
かなり恥ずかしい。
たぶん赤くなってるな、オレ。
「……うれしいの。ライがあたしのこと考えてくれるの。ライが気にかけてくれるとうれしいの」
キャルの両手がオレの背中にふれて、オレは更にドキドキ。
喜んでもらいたくて気にかけているわけじゃない。
それがオレの気持ち。
アン王女よりも…なくしたくないと思えてしまう命。
それって、たぶん…そういうことなんだろう。
かなり恥ずかしいものだけど…。
好き。
ただ、それだけ。
ぎゅっとキャルの背中を抱いて、頭に手を当てて肩に引き寄せて。
頭を軽くキャルの頭にぶつけた。
「……アン王女のこともノアに聞いてみる。でも、それだけじゃなくて、キャルの生きられる道も見つけたい」
オレはもう一度オレが思っていることをキャルに言って。
すぐそこで微笑ましいという笑みをのせてオレとキャルを見ているレーネを見る。
そういう目で見るやつらがいなければまだ恥ずかしくならないかもしれない。
今度やるときは2人きりのときにしてやる。
なんて、この失敗を反省してみる。
この魔物の住処で2人きりなんて、なかなかなることもないだろうけど。
《魔石は魔界に生きる者たちを統率するために魔界の権力者によって埋め込まれているわ。命を握られていると思わせるために。実際、血を騒がせたりいくつか思い通りに動かせることもあるけど、支配しきることはできない。魔石に逆らって生きる魔界の者もいる。人界にも様々な人がいるように魔界も同じ。
魔石を研究している者に聞いてみるのがいいんじゃないかしら?》
レーネはそんな知識をくれた。
オレはキャルを抱きしめたまま頷く。
その研究をしているやつらは敵とは思えない。
戦うことなく接触してみたい。
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