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オレの手にした木片は魔物の肩へと当たり、見事に砕け散る。
くそっ。
剣なんて握ったこともなければ武道なんてものも習ったこともない。
こんな普通の学生に、こんなでかいの相手にどうしろっていうんだっ?
オレは振り返り様に薙ぎ払うようにその腕を振ってくる魔物をかわし、床に落ちていたガラス片を魔物へと向かって投げる。
魔物の右目にグサリとナイスヒット。
おかげでオレは魔物の注意を一身に受けることとなった。
もちろん、後は逃げる。
オレが敵う相手じゃない。
少しばかり自分の力量くらいわかる。
とにかく学校から離れよう。
オレを追ってきている魔物の姿を確認するように後ろをちらっと振り返る。
魔物の体は完全にオレへと向き、その手にものすごい魔力を固めた弾を手にしている。
うわっ!くるっ!!
オレは魔法の弾を避けるように廊下を曲がる。
そのすぐ後、オレのいた廊下にでかい魔力の弾が放たれて、校舎の壁を突き破った。
オレは顔面蒼白。
無理っ!死ぬっ!
そりゃ、少しばかり自分の力を過信して、魔物とやりあったこともあるし、怪我したこともあるけど、こんなのオレなんかが敵うはずないだろっ。
死ぬってっ!!
オレは全速力で走って校舎を抜け出し、町へと向かう。
魔物はオレを追いかけてきた。
何語かわからない魔物独自の言葉らしきものを口にし、オレに向かって怒鳴っているように思える。
逃げるが勝ちっ!!
今、向き合ったら絶対死ぬっ!!
オレはちらっとまた魔物がオレに向かって魔法の弾を投げつけてきやしないかと振り返る。
予想通り、魔物の手には少しずつ魔力の弾が膨らみ始めていた。
オレはかなり息切れしているのに、相手は全然余裕のようだ。
オレの放った攻撃で片目から青い血液を流したまま、オレに鋭い視線を投げかけてくる。
逃げるっ!!
オレが前を見て走り出そうとしたとき、どんっと鼻を思いきり何かにぶつけた。
勢い余って尻餅ついて見上げたそこには、あの魔物。
オレを見下ろして、魔力の弾を手に、まっすぐにオレへとその手を向ける。
魔物が口元に軽く笑みを乗せて笑って一言呟いた。
オレは……動けなかった。
避けることも……できなかった。
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