黒騎士

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「いてっ。痛いってっ!」 オレは服をおろして、リビアを軽く睨むように振り返った。 「あんたの正義感って…尊敬もするけど呆れもするわ」 「正義感じゃないしっ。ただ…、教室で暴れてくれるあいつが憎かっただけだし…。オレ、生きてるってことは勝ったんだよな?」 オレが聞くとリビアは呆れたように溜息をついて椅子から立ち上がる。 「知らないわよ。学校の惨劇の時も、わたしはここで治療していたもの。…ライ、3日も寝たきりだったんだからね」 「3日かぁ。けっこう早く治ったんだな。リビア、サンキュ」 オレの言葉にリビアは顔を赤くして、オレに舌を見せると部屋を出ていった。 オレは声をたてて笑い、自分の笑いに背中に痛みを感じて身を折る。 生きていただけマシなのかもしれないけど…。 かなり痛い。 けど…、でも…。 あの時、確かにオレは絶体絶命で死んでもおかしくない状態だったはずだ。 誰かが…助けてくれた? あんなやつを倒せるなんて、いったいどんなやつなんだ? この国の騎士団? 四大魔法剣士とか? なんにしても、すごく強いやつにはかわりないだろう。 オレはベッドの脇の棚の上に置かれていた鞄を手にとる。 どうやら3日眠っている間に親が様子を見にきたらしい。 なんでこんなものまでっていう、オレの学校用の鞄だとか、あの日着ていた制服もあったりして。 制服はボロボロになっていてもおかしくはないのに、まるで新品のようにきれいなままで。 制服の胸ポケットに何か紙切れが入っていて、それを広げてみた。 こんなもの入れた覚えもない。 紙切れには、こう書かれていた。 『勇気ある者、王城にて待つ R・ラルシュオン』 オレは瞬きを繰り返し、何度もそれを目でたどって読む。 えっ?……えぇっ!? ラルシュオンっていったら、この国で知らないやつなんていない。 騎士団の中でも国家に多大な力を持つ黒騎士。 その団長がラルシュオン! マジでっ? オレ、これって黒騎士になれるってこと? だってあの黒騎士の団長からの誘いだぞっ? 騎士……かぁ。 オレの頭の中、もわもわと黒騎士ライ・アルフィージの名前が浮かんできた。 ……いいっ。 黒騎士になれば剣も武道も教えてもらえて、今より強くもなれるっ。 なるっ。なってやる。黒騎士。
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