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「1人、2人、3人…何人殺したっけ。数えてねーな」
「それほど殺したんだろ。血の臭いはお前に染み付いているだろうな」
鼻を突く、強烈な腐敗臭。それに慣れてしまったのは、長くこの空気を吸い、吐いているから。
「…なぁ。いつまで俺達は殺すんだろうな…」
男が、嘲笑を浮かべながら呟いた。
終わらない争いに、いつまで自分達は絡まれるのだろう。
「…柊。私達は生きるんだ。いや、生きなければならない。大切なものを奪っていったこの戦いに、終止符を打つのは私達だろ?」
ピッ、と刀に付いた血を払い、女は柊と呼んだ男を見た。
柊はゆっくりと立ち上がり、手元に落ちていた槍を掴んだ。
ひゅん、と風を切り槍を一振りすると、ニッと口角を浮かべ笑みを浮かべた。
「…そうだな。俺らにゃやる事があるんだよな」
「生き残ればいい。そうしないとここで終わりだ」
やがて、敵の軍勢が前方から突っ込んでくる。重い体にむち打ち、柊は声を張り上げた。
「オイ、生きてる奴はさっさと立て!!敵が来るぞ!!」
ふらつきながら立ち上がる同士達を背で感じながら、柊は敵陣を睨み付けた。
「陸、死ぬなよ。祝言すら上げてねぇ」
「死なない。柊こそ、あんな安物の簪で私が満足すると思っているのか?」
「…フン、言うじゃねーか。いいぜ、生き残って仕事が決まったら、上等なの買ってやるよ」
陸はフ、と小さく微笑んだ。迫り来る奴等に構えて、握る手に力を込めた。
「楽しみにしてる」
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