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静寂が、辺りを包む。
私はベッドで丸くなりながら、この静かな空間で音を探している。
アイツ用に設定した着メロ。この空気を震わせて、私の耳へと届くのを、ずっと待っている。
だけど、一向にそれはなくて。私はわかっていながらも、携帯を手に取り画面を開いた。
わかってる。わかってるのに。メールも着信もないそれにら長く深い溜め息をついた。
ずっと動かず黙っていたそれにメールがあるなんて、普通に有り得ないというのに。
受信ボックスを開けば、そこには殆ど友達の名前ばかり。
それでも私は、一番下にある、もう1年も前のたった一通のメールを消せないままでいる。
『本当に好き』
滅多に好きだなんて言えないそいつが、初めて私に気持ちを伝えたのがこれだ。
いつも私が好きなのかと聞いたら、うんとだけ答えるアイツ。
疑り深い私は、情けなく泣きじゃくりながら逃げた。
もう嫌だと言って逃げた。
逃げて、部屋に閉じ籠もって泣いた。
その時に来たのが、このメールだった。
「…バカ」
悪態をついて、メールを返信した。『遅いよ』って。
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