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健太郎とはいわゆる幼馴染みという奴で、10年は一緒にいる(お兄ちゃんは生まれてからずっとだけどね!)。
なのにブラコンにあまり寛容ではないようで、いつも気に食わなそうな顔をしては、暫しの間不機嫌になる。
「ホラ授業するぞー。席つけー」
先生の言葉に、私は健太郎から視線を外した。
「お前さぁ。兄貴に彼女出来たらどーすんだよ」
「んー?」
その日の帰り道。いつものように健太郎と並んで歩いていた時、唐突に健太郎はそう言った。
そうだなぁ。私はヘラッと笑いながら歩く。
そりゃ、悲しい。悲しいけど。
「泣くね、やっぱり。だって寂しいじゃん。好きな人がこう、遠くに行っちゃうみたいで」
私が1番じゃなくなるから、赤の他人が1番になるから。
大好きな大好きなお兄ちゃん。だけど、きっと近い将来、お兄ちゃんは世界で1番大切な人を見つける。
やっぱり、寂しい。だから私はきっと泣く。
「そらみろ。ブラコンなんて損ばっかじゃねーか」
「…まぁ、そうだね」
損得じゃないよ。だって私はお兄ちゃんの妹で、損なんかしていない。
沢山遊んだ。沢山笑った。
何だ、それで十分じゃん。
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