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それから暫くして、お兄ちゃんに彼女が出来た。
やっと春が来たと舞い上がるお兄ちゃんの隣で、私は笑っていた。
「おめでと、お兄ちゃん!」
「おう、ありがとな!」
健太郎の宣言通り、私は泣かなかった。
「本当良かったなー。俺一生独り者かと思った。まさか妹に先越されるなんて」
「まぁまぁ。いいじゃん、可愛い彼女さん出来て」
そんなことを話していると、ピンポーン、とインターホンが鳴った。
私は誰だかわかっているので、はーい、と返事をして玄関に走った。
お兄ちゃんが「楽しんでこいよ~」と笑いながら言葉を投げる。
私は返事の代わりに振り向き笑みを浮かべた。
「健太郎、お早う!」
「おう。準備できてるか?」
「うん!」
私が泣かなかった理由は…繋いだ手の温もりが、証明してくれている。
END
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