16人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
真琴が包丁を置く時、まな板からネギのカケラが落っこちた。
「お姉ちゃん…」
「あ…」
ボクが教えるとお姉ちゃんは、腰を低くしてネギを拾おうとした。ボクはそっとお姉ちゃんの後頭部にそっと触れてみた。
「っ!!?痛い!!」
「あっ………、ごめ…っ!!!」
どっちの意味で、ごめんと言ったのだろう。真琴は端から見たら、一瞬動きが止まったように見えただろう。陸からは、驚きで肩を揺らすのが見えた。
(仕事でもないのに髪を結ってるから…)
…分かってしまったのだ、コブを隠していることが。
「あ…、だ、大丈夫だ…ょ。っなんでもない。あ、りっくん、みそ汁よそってもらおうかな…、あははは…」
バレバレなのに何も言えなくて。陸は悲しくなって、蚊の鳴くような声で、おねぇちゃん…、と呟いた。
自分にはどうすることも出来ない。お姉ちゃんの優しさを不意にすることが優しさなのかが分からなくって。声をかける勇気もなくって。
お姉ちゃんのコブは、もう手の届かない位置にあった。真琴は陸に背を向けて立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!