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新星ファンタジーコンテスト「ハッピーエンドBL」
アメリカからロマンス+ファンタジーで「ロマンタジー」という新ジャンルが上陸し、先日、このジャンル誕生の切っ掛けとなったレベッカ・ヤロス『フォース・ウィング』が、本屋大賞の翻訳小説部門を受賞した。ここでいうロマンスは日本で思うところの、ロマンチックなラブストーリーではない。ゴリゴリの性描写こみであるところが特徴だ。ファンタジーが広く受け入れられた結果、様々なサブジャンルと結びつき、物語の幅が広がっていくのだろう。という状況のなか、今回のテーマは「ハッピーエンドBL」である。覚悟していたのだが、BLの書き手は手練れが多く、性的な描写も上手い。物語の途中で隙あらばその達者な描写が忍び込んでくるため、物語に集中したいのに気がそれる。今回はあくまでもファンタジーを基軸としてセレクトした。ファンタジーの部分がしっかり楽しめ、物語とBLの要素が馴染み、バランスが大きく崩れないことを重視した。 (三村美衣)

大賞

グリモワールの鍵(魔導書を開く鍵)と呼ばれるほどの強大な魔法使いが、犬に姿を変えて牧羊犬として暮らしているという、ちょっと人をくった設定にわくわくさせられる。片腕を失って除隊した元兵士の羊飼いと、その魔法使いとのラブストーリー。犬のときと人間なときのギャップというか、ギャップのなさが笑いをうむ。第二部の冒頭、まだ犬と魔法使いは別の存在だと思っている羊飼いに、犬の名前で呼ぶように強要するところには、思わず声が出た。なにより、ファンタジーがBLの箱を作るための道具に終わらず、物語としてしっかり面白い。

準大賞

因と稲

BL 連載中過激表現
1時間2分 (36,843文字)
生まれつきどうしようもなく運の悪い男・因幡。あらぬ濡れ衣を着せられ、仕事をなくし、さらに長屋の取り壊しで立ち退きを余儀なくされ、生きる気力を無くして自殺の名所として知られる浅草十二階を目指していたところ、今度はスリの容疑を着せられてしまう始末。そんな彼に、妙な関西弁を喋る青年が、自分が描いたという幸運を呼ぶ絵葉書をくれたことで、ツキがまわりはじめ……。大正時代の東京の風景を背景に、縁起の良いツキを呼ぶはがきを求める人々のエピソードに、料理ネタを絡めた盛りだくさんの内容。近代化と共に人々が信仰心を失っていくことで、存在の基盤を失いつつある聖獣の、飄々としているように見えて、内心に虚無を抱えるナイーブなキャラが愛しい。

入賞

なぜかいつも、恋した相手に裏切られ、当て馬にされてしまう剣士アステラと、不老不死をもたらす希少種なくせに、迂闊な性格で人間に捕まって監禁されてしまうダガン。行きつく先々で再会しては、結局一緒に逃げるはめになる腐れ縁の凸凹コンビの旅を描いた冒険ファンタジー。血が腐った魚よりも不味いだとか、ちょっとガサツな雰囲気だとか、人魚から読者が思い浮かべるイメージからの逸脱と、反対に人魚が持つ象徴性を踏まえた物語運びの使い分けが上手い。キャラクターの魅力とテンポのよい会話で、物語に読者を引き込む力のある作品だ。

佳作

童話の茨姫を下敷きにしたリト―ルド。お姫様を王子さまにかえただけではなく、魔女も男性の魔法使いにして、その魔法使いと王子さまのロマンチックなラブストーリーが描かれる。魔力が強いのに、みすぼらしくて、孤独でどこか気弱な感じの魔法使いの、不器用さと一途な感じが愛おしい。かけられてしまった呪いを、救いのあるものに書き換える「最後の魔女」が、かっこよく描かれているところがいい。
そこかしこに爆(ボム)が仕掛けられているため、手足を失う者があとを絶たない、かなり嫌な巨大迷宮を舞台に、失った人体を再生する魔法技師オスカーと、訳アリの冒険者ザックの冒険を描いたダンジョン探索ファンタジー。ダンジョンや魔法の設定も面白いが、さらに珍しいモンスターを料理して食べるグルメ描写が実に楽し気で美味しそう。そこにBL、さらに呪いや出自などなど、盛り込みすぎというくらい、あれこれ詰め込んだ贅沢なファンタジー。
「若君の十三の祝いの宴席でふる舞う新たな菓子を、領地の職人より公募する」繕布里城下にそんなお触れ書きが掲げられた日、老舗菓子屋の若旦那・参梧は、道で行倒れの黒狐を拾った。ところが家に連れ帰ったところ、狐は姿を消し、かわりに美しい侍が残されていた。やたら料理にうるさいその侍は、若君に献上する菓子作りを手伝うといい、店の居候となるのだが……。お人よしで優しい若旦那と、居丈高で奇妙な侍のコンビが、献上菓子を開発するユーモラスな味わいのある、神様ファンタジー。美味しいお菓子やお惣菜などをふるまい、若旦那が侍を餌付けする、その過程と距離感が楽しい。
家族から溺愛され、我儘放題に育った男爵家の四男のジゼル。あくせく働くなんて真っ平だと思っているジルは、就職を逃れるために、知り合いの貴族に片っ端から婚姻状を送りつけ……。なんとも場当たり的というか、浅知恵というか、まるっきり子供のような青年と、渋くて寡黙な辺境伯(実は竜)との異種婚姻譚。たとえ人の姿をとっていても、けっこう野蛮で怒りっぽい竜らしさを失わないところ、人と竜の感覚のギャップとそのすれ違いから生れる笑いが楽しい。
体内に神を宿す生神の大学生・直桜。つづけば準公務員採用という文言に誘われて応募したバイトは、なんと邪魅に憑かれた鬼とバディを組み、鬼を浄化するという仕事だった。進学のために故郷を出てからずっと、普通の人間として暮らすことに憧れ、怪異に関わることは避けてきた直桜。しかし弱った鬼を見捨てることもできず、嫌々ながら仕事を引き受け、やがて因縁のある邪教組織との争いに巻き込まれていく。凝った設定と蘊蓄も楽しい、スケールの大きな伝奇もの。性的表現とも相性の良いジャンルなので、物語のバランスを壊すことなく、BLとも無理なく馴染んでいる。
差別の残る世界で、実力で法を覆し、オメガながら公爵家の家督を継いだルカ。結婚の意志がまったくない彼のもとにある日、オメガの聖女に使えるアルファの聖騎士の学友が突然やってくるところから始まる。中世ヨーロッパ風階級社会の身分差を逆に利用し、オメガへの差別を改革しようとする主人公をはじめ、老執事や、家令など登場人物が皆、飄々としていて食えない感じがいい。発情を生理的に捉え、さらに武器にも使う主人公の強かさがかっこいいのに、ラブストーリー部分は初々しい感じで、そのちぐはぐさが可笑しい。
募集概要
「新星ファンタジーコンテスト」 ファンタジー書評家「三村美衣」氏とエブリスタが再びタッグを組み、新星のようにきらめくファンタジー小説を発掘します! 受賞者には三村美衣氏からの選評と個別アドバイスに加え、創作に役立つ書籍を贈呈! あなたのファンタジー作品をより輝かせるため、この機会をぜひお役立てください!
スケジュール
・募集期間:2025年1月7日(火) 12:00:00 ~ 2025年3月9日(日) 27:59:59 ・最終結果発表:2025年5月中旬頃予定
募集テーマ
第23回目のテーマは「ハッピーエンドBL」です。
・Ωの幼馴染が敵国に誘拐された! 奪い返しに行くだけじゃない。今こそ、ずっと隠していた本当の気持ちを伝えなければ! ・叔父の陰謀で、双子の妹の代わりに後宮入り。男だとばれたら身の破滅だ。でも、抱きしめるだけの帝からは何故か溺愛され!? ・僕たちは種を超えて結ばれた騎士と狼王子。めでたしめでたしのあとはひたすら甘い生活で……糖分高めな〝その後〟ライフ!
ハッピーエンドBL」の要素を含んでいれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 思わず最後まで一気読みさせられる、そんな引力を持ったファンタジー小説をお待ちしています!
賞
大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 ・日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」書籍3冊 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 ・日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」書籍2冊 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 ・日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」書籍2冊 佳作 数作品 ・三村美衣氏からの選評
※日本文芸社「クリエイターのためのシリーズ」につきまして、受賞時にご所望のタイトルをお伺いします。 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。
講評者プロフィール
三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SF小説賞の審査員を歴任。 創元ファンタジイ新人賞の最終選考も務めた。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)、『大人だって読みたい少女小説ガイド』(時事通信社/共著)など。 2018年10月~2019年12月、monokakiにてファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。好評を博した。
応募要項
・ファンタジー要素を含む作品であること。 ・文字数は5000文字以上。 ・20000文字までの内容で選考を行います。 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品、並びにエブリスタ内の公式コンテスト及び他サービス等の投稿コンテストで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他社サービス等への重複応募が確認された場合、応募取消しになる場合があります。
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