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エブリスタ小説大賞2025 河出書房新社×梨「ホラー短編賞」
ーー河出書房新社 選評ーー この度は「河出書房新社×梨 ホラー短編賞」にご応募をいただき、本当にありがとうございました。初めての試みにもかかわらず、非常に多くの作品をお寄せいただき、驚きとともに、とてもうれしく思っています。 惜しくも受賞とはならなかった作品を、募集内容にも記載した「短いながら、身体感覚を揺るがすような作品」という観点から、佳作として選定いたしました。 今回、3部門での募集とさせていただきました。どのモチーフを選ぶか、どんなテーマにするか、どのホラージャンルで書くか……など、どの部門もそれぞれの難しさ、悩みどころがあったかと思います。「この部門でこう来たか!」と驚く作品もあれば、「王道だけど、やっぱり怖い!」と慄く作品もあり、楽しみつつ、震えつつ、読ませていただきました。 特別審査員である梨さんによって選ばれた10作品については、受賞全作品を収録したアンソロジーとして今秋書籍化させていただく予定です。どうぞ楽しみにお待ちください。 幸いにも第2回がありましたら、またたくさんのご応募をいただけましたらうれしく思います。 この度、ご応募いただいたみなさまに心より御礼を申し上げます。  

(河出書房新社 編集部)

ーー梨氏 選評ーー この度は、「ホラー短編賞」にたくさんの作品をお送りいただき、誠に有難うございました。全体の有効投稿数は2000作以上にのぼり、(誇張表現でなく)エブリスタの中でも過去最大規模のコンテストになったそうです。優秀賞の枠は最大で20作というレギュレーションなので、倍率としては1%を切っていることになります。途方もない。 数百数千の投稿作を読んでいく中で最初に感じたのは、「どうやら、投稿者の中で緩やかに蓄積された『型』のようなものがあり、特にアンソロ入りを目指して作られた小説の起承転結はそこに最適化されているらしい」ということでした。いわば傾向と対策ですね。これは恐らく「5分シリーズ」の影響が大きいのでしょう。 文藝賞であれメフィスト賞であれ電撃大賞であれ、公募文学賞に「傾向」はつきものです。コンテスタントである以上、その舞台の構造すなわち「傾向」を分析し結果に繋げようとする姿勢が素晴らしいものであることは言うまでもありません。 そのうえで、「小説を商業のアンソロで喜ばれそうな構成に近付けること」と「小説をひとつの作品として推敲すること」は、必ずしもイコールにはならないのかもしれません。前者の行為は無意味だと言っているのではなく、前者の行為は後者を補完しないという意味です。 ネガティブな評価というよりは、どちらかというと「この設定/舞台/キャラクターでもう数千字くらい読みたかった……!」となる作品が多かったが故の嬉しい悲鳴です。もっと読ませてください。 いずれにせよ、いつもはあまり読まない量と傾向の作品を読ませていただいたことで、私自身とても勉強になりました。改めて感謝を述べるとともに、今回ご応募いただいた方──特に優秀作として受賞された方々に、心からお祝いを申し上げます。

(ホラー作家 梨)

【受賞作】部門①「身体」にまつわるホラー

「身体」にまつわるホラーを募集する部門にありながら、身体に存在しない器官を題材とし、しかもそれがどの短篇よりも身体的に描写されていたという奇怪な作品です。隔靴掻痒(かっかそうよう)という言葉は多分こういう人が作ったんだろうなと思わされるほど「感覚」を文章に落とし込んでおり、非常にロジカルで気持ちよく読めました。(梨)
まず題材選びが巧いです。「身体」から「内臓」を連想する方はいても、まさか『黄帝内経』における「五臓六腑」まで発想を飛ばす方は中々いなかったのではないでしょうか。終盤に「地方の郷土史に詳しい老人」が出て以降の内容に関しては、もっと作者さんの世界観に沿った語り口で読んでみたい気もした(もっと迂回してもいいよ! と思った)のですが、恐らくこれが種明かしに掛けられる文字数とカタルシスを天秤にかけた結果なのだろうとも思うので、不満とかではないです。最終行の落とし方も良かったですね。(梨)
前段のインターネット関係の描写もですが、後段における場面転換後(カフェで友人と会うあたり)でしっかり「目の前にいる人間の恐ろしさ」を怖く描写している点が良かったです。ネットロアを舞台に怖い中短篇を作る際には「どうネットから抜け出すか」が求められるというパラドックスじみた難点があるのですが、しっかり映像的に恐ろしいシーンが加えられることで分かりやすく緩急が付いています。(梨)
確かに鱗も身体の一部ですね。言われて気付いた。この作品は修辞や細かな助詞の遣い方が鋭く練り上げられていました。一ページ目の“魚の鱗よりも、ずっと大きい。掌の半分ほど。”などが象徴的ですが、付加情報を後置修飾的に二文目へ回すことで一文にかかる文節をかなり抑えています。これが文全体に独自のグルーヴ感を出しており、独白体の語り口と見事に噛み合っていると感じました。(梨)

【受賞作】部門②「感情」にまつわるホラー

ずーっと嫌でした。嫌部門一位です。キッチンの排水溝に関する嫌さを視覚触覚嗅覚と段階的に立ち昇らせていく負のホスピタリティがしっかりと機能していました。身近な題材だからこそ想像力を喚起しやすいのは勿論、そこから坂道を転がり落ちるように事態が悪くなっていく展開にも妙なリアリティがありました。本当は「そう」なるはずなどないのに、読んでいる最中にそのことが気にならないのは、そこに至る過程の描写が丁寧だからでしょう。(梨)
圧巻。もし今回のコンテストに「最優秀賞」の概念があったら、文句なしでこの作品が授賞していたでしょう。今見返したら、この作品の個別評価欄に「素晴らしい 三重丸でもいい」と書いてありました。(私は一次選考時点で「◎」を最高とする五段階評価をエクセルにちまちま書き込んでいた)「見えている」ものごとの断絶を軸とした終盤の展開は勿論、序盤でたびたび差し込まれる寂れた町や食堂の描写が本当に素晴らしく、そこで一気に引き込まれました。日中、にこやかな家族と一緒に観光地の螺旋階段を上っているだけの場面で、何故あんなに陰鬱な気持ちにさせられるのでしょう。また、「まるで風船を持つ赤ん坊のように頼りない感触」といった直喩だけでなく、「似顔絵師」や「地蔵の列」に代表される暗示的/重層的なモチーフの選び方が洒脱でした。非常に小説らしい小説です。どこをとっても無駄な描写がなく、テキストがよく研がれていました。(梨)
かなり深く刺さりました。何度も何度も読み返して、そのたびにああ良い文章だなあと独り満足していました。言語感覚が現代詩やポストモダン文学に近いというか、「自分の言葉」が「他者へのテキスト」になる過程で付着する色々なものをもっかい削ぎ落とそうみたいな純化じみたプロセスってホラーの世界だとあまり顧みられないんですよね。勿論、この作品はそのうえでカテゴリエラーになることもなく、しっかりホラーの世界に共存できています。起きているのはすごく救いようのないことなのに、あの最後の景はとてもうつくしいものに思えて、個人的にそこも好みでした。(梨)
短いながらもしっかり痕を残す殺傷力にやられてしまいました。誤解を恐れずに言うと、この作品内で起きていることはかなり「地味」な部類です。今回の賞典に限らず、とかくホラーは日常的にたくさんの人が血塗れになったり狂ったりしますから。しかし、ここで起きている「あること」は、そのどれよりも不穏で不吉な凶兆として記憶に焼き付きました。時間としては一瞬のモノローグにもいくらでも字数を掛けられる小説という媒体の強みであり、そういう意味でも「ホラー短篇」の賞に相応しい作品だと思いました。(梨)

【受賞作】部門③「記憶」にまつわるホラー

突拍子もない舞台と途方もない設定なのに、気が付けばぐいぐい読まされていました。だって《SPACE BLASTER》なる玩具の光線銃で撃たれた浦澤の頭部が「やだっぷあっ」という声を残してクッキーの型抜きの要領で消失するんですから。あの浦澤の頭部が。今回の入選作の中ではトップレベルの死傷者が出ているし色々なことがまだ全然解決していないのに、終わり方がなぜかすごく爽やかでエモーショナルな点も個人的にすごく好きでした。「やりきった」という感じがします。実際、少しでも減速したら駄目な類のテキストだと思うので、「やりきっている」ことはかなりの加点対象になるでしょう。(梨)
すごくちょうどいい題材選び。wikiやコピペにもならず口伝レベルでしか伝わっていないネットロアの舞台として「MMO」を選ぶのは絶妙ですね。最後の落とし方もサービス精神が感じられます。起こることに対する作中主体の語り口や距離感が「ありそう」感に拍車をかけており、生々しさの演出として機能している点も非常に良いと思いました。不気味だとは思っているけど怖がりすぎてはいない感じ、と言えば良いのでしょうか。(梨)

【梨氏ピックアップ賞】

コンテスト的には「撒き餌」を書かれた方ですね。個人的には「おおきくなったねぇ」も非常に好きでした。この方の作品は入力に対する出力の大きさが良かったというか、最小の描写から可能な限り大きな恐怖を出力するのが上手いなと感じました。柱に傷をつけてるだけで、山の中で鳥の死骸を見つけただけで、ここまで恐怖感情を最大化できるのは凄いと思います。そのスキルは「ホラー作家」として必須の技能だと思うので、「作者」を対象としてピックアップする枠にはこの方が相応しいと考えました。(梨)

【佳作】部門①「身体」にまつわるホラー

報告書や手記、SNS投稿ログなどの組み合わせで、考察しながら読む楽しさがありました。どことなく哀しさのある終わり方も余韻がありました。(河出書房新社 編集部)
「下限なし」という本コンテストの特性をついた、超短編! そのなかにインパクトが残る物語性がありました。(河出書房新社 編集部)
「身体をのっとる」という王道のテーマですが、不穏な世界観がうまく表現されていました。淡々とした文章のリピートも恐怖を増幅するのに効いています。(河出書房新社 編集部)

【佳作】部門②「感情」にまつわるホラー

応募作品のなかでも「感情」というテーマにぴったり合致した作品でした。「怒怒怒」の行く道、ハードボイルドな展開も読みごたえがあり、ラストにも「今っぽさ」を感じました。(河出書房新社 編集部)
とにかくラストのインパクトがすごいです! 最後のセリフがなくても、十分に余韻が残るようにも思いましたが、思わずビジュアルを想像してぞっとしてしまいました。(河出書房新社 編集部)
タイムリープもの。繰り返される出来事のなかで、徐々に変化していく登場人物の感情と行動に、先が気になってぐいぐいと読み進めました。ラストの絶望感もよかったです。(河出書房新社 編集部)
「執念」の一般的なイメージをうまく生かした機転の利いた作品。読み終えた後も、ずっと怖さが続く気持ち悪さがありました。(河出書房新社 編集部)

【佳作】部門③「記憶」にまつわるホラー

テーマの使い方としては王道なものの、そのなかに、因習・アニマルホラー…など様々なホラー要素が詰まっていて、ラストの怒涛の展開も含め、短編とは思えない濃密さでした。(河出書房新社 編集部)
子どもの頃のいじめ、記憶に残る変な家、それらにリンクするような恐ろしい現在の出来事、など過去と現在がうまく融合しており、テーマをうまく生かしていると感じました。(河出書房新社 編集部)
呪いのアイテムがどうテーマと絡んでくるのか、興味深く読みました。子どもの遊びとバーや合コンという意外性のある組み合わせも面白かったです。(河出書房新社 編集部)

ピックアップ作品

【最終候補】部門①「身体」にまつわるホラー

12分 (6,862文字)

【最終候補】部門②「感情」にまつわるホラー

【最終候補】部門③「記憶」にまつわるホラー

・応募期間:2025年12月1日(月)12:00:00 ~ 2026年3月2日(月) 27:59:59 ・中間発表:2026年5~6月予定 ・最終結果発表:2026年7~8月予定
※賞典4は「ホラ短2025」のタグが付いている作品が対象となります。
※賞典4「梨氏ピックアップ賞」の対象作品は「ホラ短2025」のタグが付いているものに限ります。 ※本コンテストでは、作品演出として画像素材をご利用いただくことも可能です。 ただし、当サイトのガイドラインおよび法令に抵触する可能性がある表現を含む画像は、自動的に非公開となる場合があります。 ガイドラインに抵触するかどうかの判断基準やシステム仕様について、個別の確認・回答及び非公開に関するお問い合わせには対応いたしかねます。 また、非公開となっていない場合でも、ガイドライン・著作権違反が判明した段階で選考対象外となりますので、ご理解のほどお願い申し上げます。 ※同一作品を2つの部門に応募することはできません。 ※性表現に関するポリシーに記載のある「レーティングマーク設定が必要な作品」に該当する作品を準備、応募される際は、必ずレーティングマーク設定をお願いします。 ※シリーズタグが設定されている作品は、第1話のみ応募いただければ、シリーズ全話が選考対象となります。 ※第三者の著者権その他の権利を侵害した作品(他の作品を模倣するなど)は判明した時点で応募が無効となります。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。 ※応募はお一人様3作品までとなります。4作品以上ご応募いただいた場合、応募された順に新しいものから3作品のみを選考対象とします。 ※エブリスタ内の公式コンテストや他社サービス等への重複応募が確認された場合、応募取消しになる場合があります。
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