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活字に恋する
江戸ひずみ
2015/6/24 | 更新 2015/6/24
ショートストーリー
物語の一節、数百文字の短編などを投稿する場所です。 既存作品の一文を抜粋して宣伝に用いても良し。 オリジナル作品を即興で考えて投稿してもらっても構いません。
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江戸ひずみ
2015/6/24 9:45
「生まれて初めてこんなに他人から親切にしてもらったよ。それも、道を散歩しているだけで何回も何回も、知らない人から声をかけられた。幸せだった。みんながこんなにも優しいというのが平和で、慈愛に満ち溢れていて、この星も捨てた物じゃないと思えたんだ」
まるでそれまで優しさを感じたことのないような言い草。
「けれどそのうち気付くわけだね。その優しさが全て哀れみであるということに。車椅子の女の子は可哀想、それが一般常識だとは、狂った世界だと思わないかい?」
微塵も思わなかったから、僕は彼女に声を掛けたのだ。
「私は信じられないよ。だって脚が動かなくともこんなにも世界は美しいのに、みん
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4・
江戸ひずみ
2015/6/24 9:44
彼女は僕を見上げる。彼女が平行の位置から僕の事を見る状況は少ない。
「わかるかい?今まで出来たことがほとんど不可能になるんだよ。世界は二本の脚で歩くことを想定とした造りになっているからね。私は平凡ではなくなった。世界からイレギュラーとして弾き出されたんだ」
彼女の人格が脚を失ってから形成されたものとは思えないが、少なからず今の性格になったことには影響をしているはずだ。
以前から一般的だったとは、今の彼女からは考えられないが。
「私は何も出来なかった。高い所の物を取ることも、階段を降りることも。今まで見えなかった物がたくさん見えるようになった」
実に楽しそうに話しを
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3・
江戸ひずみ
2015/6/24 9:43
風が吹き、彼女の柔らかい髪を靡かせる。
それを片手で抑える姿は、やけに女性らしく見えた。気がした。
「私は、脚を失って世界が変わったんだ」
なんだか不思議な気分だ。聞いてはいたが、信じていなかったというか、そういうものだと思っていた。
彼女にも、その二本の脚で歩いていた時代があった。
その脚は後天的に動かなくなったもので、今だからこそ身体の一部になってしまっている車椅子もかつては存在しなかった。
「嗚呼、なんて素晴らしい景色なんだろう。そう思った。地面はこんなにも歪んでいて、空はこんなにも遠くて、社会はこんなにも自分勝手で、そして人はこんなにも優しい
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2・
江戸ひずみ
2015/6/24 9:43
君想う故に崩壊するパラダイム - 弥生 性悪説より
何かを知るということは、責任や偏見を生み出す。それは時として良い方向に物事が展開するかもしれないが、大抵は余計な概念を植え付ける。
僕が彼女を知らなければ、今頃こうしていないし、そしてこの半月後に卒業論文を焼却することもなかった。
「私は新しい事を追い求めてる。つまり変わらない日常と言うものが心底嫌いなんだね。だってつまらないじゃないか」
癪に触る。何を言うんだこの車椅子少女は。
「僕の理想を『つまらない』と呼ぶのはやめてくれ」
後ろから彼女の頭を指で軽く付くと、反動でゆらりと身体を揺らした。
それから振
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「生まれて初めてこんなに他人から親切にしてもらったよ。それも、道を散歩しているだけで何回も何回も、知らない人から声をかけられた。幸せだった。みんながこんなにも優しいというのが平和で、慈愛に満ち溢れていて、この星も捨てた物じゃないと思えたんだ」
まるでそれまで優しさを感じたことのないような言い草。
「けれどそのうち気付くわけだね。その優しさが全て哀れみであるということに。車椅子の女の子は可哀想、それが一般常識だとは、狂った世界だと思わないかい?」
微塵も思わなかったから、僕は彼女に声を掛けたのだ。
「私は信じられないよ。だって脚が動かなくともこんなにも世界は美しいのに、みん