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Key
2016/4/2 | 更新 2016/6/18
四百字作文 19
お題から連想される事を四百字以内に纏め、SSを作成して下さい。 お題 『桜に染まる』
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11・
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6/18 18:01
「私の贈った詩歌(ウタ)、如何でしたかな、高子殿」
廊下を行く着物姿の女性に、そう声を掛けたのは、縁側に胡座をかいて座る若い男だ。高貴な身形の割には何処か行儀の悪いその男に、女性は手にした扇子で顔を覆いつつも言葉を返す。
「『二条の后』と呼びなさい。馴れ馴れしいわよ、業平」
「何をそんな。私と貴女の仲ではないですか」
ケラケラと笑う男を前に、女は扇子で隠した顔に不快感を滲ませる。
「貴方の詩歌は、屏風に描かれた紅葉の美しさを詠ったものでしょう」
「貴女への燃え上がる様な想いを詠ったのですよ」
「そのまま焼け死ぬがいい」
毒突いて、足早に立ち去ろうとする女。その背中に、
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10・
おうぎ
5/30 2:23
中学卒業。
その年の誕生日は家族の誰も祝ってくれなかった。
家にはママの浮気相手が悪びれる事無くそこにいる。パパは家族を省みない仕事人間だから構わないけど。
「そう言えば、君、今日誕生日でしょ?」
「……何で知ってるの?」
「3月9日生まれだから『さくら』って名付けたって言ってたんだよね」
「お誕生日おめでと」と言って、男は私に口付けた。
「続きは大人になったらね」
あれから5年。
20歳の誕生日、私のお義父さんになったあの人とママとで家族旅行。
宿泊先はベランダから美しい桜が見えて、酒に弱いママは早々に寝てしまい、お義父さんと2人で夜桜見物。
ふと、薄紅の花びらが舞いよって、お義
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9・
クラブハウス
5/26 23:54
目を閉じると思い出すのは、十年前のあの日、セピア色になりかけている記憶。
見下ろす街並み、桜の大樹からひらり舞う花弁、少女と繋いだ右手。
「約束だよ」
思い出すその声は初めての切なさ。今でも俺の心を締め付ける。
深い呼吸とともに、そっと目を開ける。
見下ろす街並みは随分と様変わりしていた。同じ季節なはずなのに花弁は舞わない。その桜が立ち枯れているからだ。こんなに小さな木だったかなと思ってから、あぁ、俺が大きくなったのだと得心する。右手は空を握るだけ。
十年だ。色々変わる。街も、人も、心も。
何を期待していたのだと自嘲気味に笑う。呼気はため息じみていて。胸を走る切なさは、消えない。
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6・
たお
4/14 14:25
桜が陽気にはにかんだ。
君は小さく歌っている。
薄紅は青空に映え、君は踊るように歩く。
たおやかに花びらが舞い、まだあえかな両手が空へ惹かれた。
忘れてしまわないよう、その瞬間を心に留めた。
花は散り、樹は枯れ人は還ることなど、いずれもまだ知らないのだろう。
笑顔が咲いて、花は歌う。
桜花の群れとひとひらの君と。
ただ無邪気に誕生の季節を楽しんでいた。
笑っては舞い、踊ってははにかみ。
いとゆうがうららかにそれを混ぜると、ついにはどちらが君か桜か、分からなくなった。
やがて僕はそれすら受け入れた。
それは今、そのままの春である証なのだから、と。
(263文字)
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5・
時給500円
4/13 23:45
新緑に町が染まる四月の下旬。
今日は季節外れの大雨で、当然傘を持たなかった僕は仕方なしに木の下で雨宿りをしていた。
その木は桜だったのか、僅かな薄桃色の花弁が雨に濡れて地面に浸っている。
今は緑の葉で覆われた桜の下で途方に暮れていると、一人の女の子が鞄を頭の上に掲げながら走ってきた。
真新しい制服に包まれた少女の頬は、息があがって綺麗な桜色に染まっている。
隣で肩を払う少女を一瞥して、顔をどんよりとした空に向ける。
春というのは、どんなものも輝いて見えてしまう。
そんな気持ちを反映するかのように、雲の間から光が差し込んできた。
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4・
矢口明樹
4/11 1:09
心が染まっていく。どんどん君に染まっていく。
駄目なのは分かってるのに。
朦朧とする意識の中料理する音と美味しそうな香りが漂ってくる。
しばらくするとドアが開き目の前に料理が並ぶ。
お腹が鳴ってしまいそうなぐらい空いてるのに料理は喉を通らない。
手元で響く鉄の音が警鐘を鳴らす。
食べてはいけない。
「はい、あーん」箸を目の前に突き出す君の顔は私の意識を蹂躙する。
口に入るナニかの味はもうわからない。
まだ混濁する世界の中で目の前が薄暗い黒からピンクに変わる。
昔の夢。桜の中の君が柔らかく微笑む。
「好きです。壊したいほどに」私は桜に染まる。
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3・
おうぎ
4/11 0:31
「春が来る前の桜ってさ、恋人のいねぇ枯れた人間みたいじゃね?」
「いきなりなんだよ」
「んで、春が来て花が咲くわけよ。あのピンク色がエロいしさ、花って受粉じゃん。つまり人間的にもアレなわけな」
「やめろ。桜を穢すな」
「で、まぁ、葉っぱとかが、二人の経過、みたいな?実ができちゃうから、でき婚、みたいな?」
「やめろってんだろ」
「桜はその年の冬には枯れちゃうけど、人間的見方でいくと、枯れは離婚か、老衰か、ってところ?」
「何が言いてんだよ」
「つまりー、彼女いない歴=年齢のお前が、花見の席で別の団体だった女の子と意気投合して、ワンナイトラブのはずな結果のできちゃった婚とか、桜に染められたなって
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2・
おうぎ
4/5 23:28
陶芸家となった元同級生と、それを売る僕。
当時は大して言葉を交わす事もなかったのに、今や大事なパートナー。
今日も個展の打ち合わせの為に彼の仕事場に来れば、庭先には自己主張激しく、桜の木が咲き誇っている。
「なぁ、人は桜の何処に感動するんだ?只の花じゃないか」
僕の言葉に彼は苦笑いを浮かべながら、僕にお茶を出してくれる。
その湯呑みを受け取った僕は、思わず口元が緩んだ。
「良い湯呑みだ。これもお前の作品だろ?」
僕が笑顔で問えば、彼は笑いを堪えながら言った。
「それと同じなんじゃないか?この湯呑みも多くの人にとっては只の湯呑み。100均に並んでいたってわからないさ」
「……なるほど」
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「私の贈った詩歌(ウタ)、如何でしたかな、高子殿」
廊下を行く着物姿の女性に、そう声を掛けたのは、縁側に胡座をかいて座る若い男だ。高貴な身形の割には何処か行儀の悪いその男に、女性は手にした扇子で顔を覆いつつも言葉を返す。
「『二条の后』と呼びなさい。馴れ馴れしいわよ、業平」
「何をそんな。私と貴女の仲ではないですか」
ケラケラと笑う男を前に、女は扇子で隠した顔に不快感を滲ませる。
「貴方の詩歌は、屏風に描かれた紅葉の美しさを詠ったものでしょう」
「貴女への燃え上がる様な想いを詠ったのですよ」
「そのまま焼け死ぬがいい」
毒突いて、足早に立ち去ろうとする女。その背中に、