四百字作文 22
お題から連想する事を四百字以内に纏め、SSを作成して下さい。 お題 『明くる年』
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4・ 恢影 空論
幽かに笑うような冷たい風が、私と交差点の隙間を走り去っていった。寝静まった硝子の海の何処か、月のいないソラの向こう側。

「まだかー」

隣の貴女は、頬を赤くして夜を睨む。解けていく色彩が次第に白へと移ろい始めて、何もない日々がまた産声を上げようとしていた。眠れないと言っていた貴女は弾むように脚を前へ踏み出していく。

「歩き出そう?」

不意に高鳴る胸と、引かれていく繋がれた手。藍色のソラに呑まれたアスファルトの上を、貴女の笑い声と共に歩いていく。

「きっと、もうすぐ」

私が夜に俯いても、貴女は間違うことなく明日へ向かっていく。

『今日は帰りたくないの』

最後の夕陽に沈みながら貴女は
3・ クラブハウス
 カップ麺の蕎麦にお湯を注いでから、百均で買った砂時計をひっくり返す。
 12月31日、時刻は23時20分頃。少し狂った俺の生活リズムの晩飯は、いつもこんくらいだ。

 ガキの頃は、年越し蕎麦が嫌いだった。
 別に蕎麦自体が嫌いだったわけじゃない。実家が蕎麦屋だったから、食い慣れていた。嫌だった理由は、クリスマスから冬休みが明けるまでの特別感がそこで切れるような気がしたから。

 砂は見る間に落ちていく。

 蕎麦が食えなくなったのは突然だった。
 交通事故だ。助かったのは俺だけ。「たまには家族サービス」なんていう気紛れを起こした親父は、本当にバカだ。

 時間は決して止まらない。

 事故か
2・ おうぎ
12月31日、日没後。

壮大な社の屋根瓦に
続々と集まる参拝者を眺める2つの人影

「あぁ、俺もあっち側で年越しを楽しみてぇよぉ」
「お前の体質上、この時を安寧に過ごすのは無理だろ」

1人は愚痴り
1人は告げる

愚痴る者は寝そべり
告げた者は刀片手に音を待つ

鳴り響いたは除夜の鐘

一鳴り響けば
寝そべる彼から闇が露わる

「相変わらず煩悩にまみれてんなぁ、俺は」

彼の嗤う間に
闇は裂かれて霧散する

「仕事納めだ」
「仕事初めっしょ?」

年(ヒ)が暮れ年(ヒ)が明くまでの常闇で
響く音色が闇を誘い曝け出す

溢れし闇は
より良き依り代求めて彼に集い
裂かれて俗世のチリと化す


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