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2018/3/3 | 更新 2018/9/17
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28・
クラブハウス
10/4 15:23
『絶海のサンタマリア』
サンタマリア号は船路の途中、不運なことに流氷に衝突、船底に大穴が開いた。
「船長、大変です」
曰く、誰か降ろさねば転覆してしまうらしい。
私は新入りの一番太ったの男の肩を叩いた。ああ、嘆かわしい。けれど誰かがやらねばなるまい。
「船長!」
しかし、サンタマリアはまだ沈む。この船の浮力を保つにはまた誰かを降ろさねばなるまい。
私は十年連れ添った船員の肩を叩いた。ああ、嘆かわしい。けれど誰かがやらねばなるまい。
「船長! まだだ!」
ああ、なんたる不幸。私は続いて航海士、副船長の肩を叩いた。ああ、けれど、誰かが。
そして、この船には私一人になった。
ザブン
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27・
クラブハウス
12/30 13:24
>>26
「高校中退した時に、ちゃんと現実見なくちゃいけなかったんだろうな。夢から醒めたら現実。でも、俺は夢見るのやめても現実は見れなかった。大人になれなかった」
タバコをくるりと回して「で、こんなザマ」と鼻で嗤う。
急に俺は自分が恥ずかしくなった。
「俺、中学んときの夢、何も書けなかった。高校の時も、大学入ってからだってずっと。訳わかんないまま訳わかんない仕事して、楽しくもねぇし。俺だって大人じゃねえよ。子どもだった時期さえないだけだ。咲田、お前は憧れだったんだよ。勉強もすげえし、運動もできた。ちゃんと夢もあって、んで、そして……」
「今もうこんなんだぜ」
咲田は顔を落とし
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26・
クラブハウス
12/30 13:23
くたびれた会社帰りの夕暮れ、十二年ぶりに咲田に会った。灰のスウェットに紺のダウンジャケットを羽織って、変わらぬガニ股で歩いていた。
なんとなく目が合って、十二年ぶりだというのにお互いのことが分かって、それとなく正面で向き合いを立ち止まって一拍、二拍。
「おう、久しぶりだな」
なんだか眠そうな目のままそう言って、咲田は僅かに右手を上げた。こいつそういや垂れ目だったな、なんて考える。
「久しぶりじゃん、元気?」
「ん、まぁ、ぼちぼちだな。田中は会社帰りか?」
「そうそう、いつもはもっと遅いけど、今日はすこし早め。プレミアムフライデーってやつ」
「あー、前ちょっとニュースで見たわ。本当にやって
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25・
えのき
7/18 23:12
ハローハロー、聞こえますか。
ああ、聞こえますか。
そちら様は元気でよろしくやっていらっしゃいますでしょうか。
私ですか。
私は相も変わらずといったところでしょうか。
ゴミ箱の中で、クルクルと毎日代わり映えのないダンスをしていますよ。くるくる、くるくる。
向こうの世界に渡ってしまった貴方なら分かるのかもしれませんが。
人が死ぬと、残骸がその人でなくなってしまうのは、何故なのでしょうか。
魂が抜けたからですか。その肉塊にその人が宿らなくなってしまったからですか。であるならば、魂の所在は、定義はどこにあるのですか。
血ですか、脳ですか、心臓ですか、それとも、この肉塊全体ですか。
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24・
クラブハウス
5/28 9:07
「倒の塔」
月が踊る。
細い三日月がその身をくねらせ、右へ、左へ。感情に潰される頭の片隅で、冷え切った俺の思考がそれを観察している。
一つの村を滅ぼした業火は、未だ大地にその余韻を残していた。ために、そこに転がる俺の背中は焼け焦げて、酷い痛みが刺し続ける。涙は流れた内から乾いて、気体となり、大気を歪ませて、月を踊らせる。
今宵、月が踊るのは、俺が泣くからだ。悔しさを、寂しさを、悲しさを、怒りを、月は道化て慰めようとしてくれている。
「でも……それでも、俺は……!」
許せない。
銀の甲冑。剣、閃き、流れる血、吹き飛ぶ首。放たれる火。母の断末魔が、いつまでの鼓膜に木霊している。
許せない。同
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23・
山田一二
9/17 22:52
嗚呼ーーそりゃそうか、なんにも為さずに、なんにも考えずに生きてたあの頃に比べりゃあ今の方が余程生きてはいるんだろうさ。
無意識に震えた喉から漏れた空気はあの頃より随分掠れちまって、生きるってのは磨り減るようなもんかとも思う。
俺の世界はずっとちっぽけだった、大体一部屋ありゃあ完結してた。今だって昔馴染みを懐かしくなって、自分の世界に戻ってきてみてる。
だけど、あの頃みたいに画面を見てみても俺の指は滑らねぇし、書きたいモンも浮かんじゃこねぇ。
久々に見た昔馴染みらは相も変わらずキラキラしながら走ってんのに、俺はもう眺めるだけ。
勝負は降りたってのに未練がましいだろ?
まぁ、でも、それで良かった
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22・
クラブハウス
7/20 4:24
「モノラル・ゾンビ」
フロア・ミュージックは勢いを増した。
合わせて、原色めいたスポットライトが踊り狂うゾンビを照らす。
皆身体は引き攣っている。死後硬直という奴だ。関節は曲がらず、それぞれ不規則な位置で固定された身体をバタつかせるように踊っている。
ステージ上にはベースとドラム。ギターとボーカルは未だ生きていて、ゾンビうろつく街中を依然逃亡中。
したがって、奏でられるのはリズムだけ。単調な四小説がフロアを沸かす。
ベースとドラムの腐敗は酷い。肉は腐ったトマトのようにぶよぶよ。ドラムの片目は落ちて、スネアドラムの上。三拍目と七拍目には叩きつけられるスティックに合わせて高く飛んだ。
ベースは
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21・
白羽莉子
4/9 12:09
>>[[27388640]]
「そうなのかなあ」
ねこすけくんは首をかしげます。
「だって両手がなかったら物をもてないし、目がなかったら何も見えない。鼻がなかったらにおいがわからないじゃない。早く見つけないといけないわ!」
いぬみちゃんは腹をたてています。それでもねこすけくんは不思議だなあと思い、首をかしげました。
「腕がないならば、足で物をもてばいいし、目や鼻がないのならば、耳や体に触れた感覚を頼りにすればいいじゃないか」
「そんなの不便だし、完璧な人間ではないわ」
ねこすけくんはいぬみちゃんを見つめます。いぬみちゃんは一歩下がりました。
「君だって右目と右腕は作りものだ
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20・
白羽莉子
4/9 12:09
「ねこすけくんといぬみちゃん」
ねこすけくんは、鼻と左目と両手のない人間です。のんびり呑気に旅をしているのでみんなにそう呼ばれています。
ねこすけくんは今日ものんびり歩きます。今日で三十歳になりますがそのことも気にせず、オアシスを求めて砂漠の真ん中をのんびり旅します。
そんなねこすけくんの目の前に女性がいました。彼女の名前はいぬみちゃん。完璧な姿をした人間です。二つのきらきらした目は右目が青色、左目が緑色をしています。
「やあやあ、いぬみちゃん、どうしたんだい」
「どうもしないわ。あなたはいつになったら完璧な姿の人間になるの? もう三十歳だよ」
いぬみちゃんは鼻で笑っています。ねこす
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19・
黒田悠月(旧黒猫)
3/13 13:07
>>[[27158441]]
スカーレットは最後の意地で唇に笑みを浮かべて見せる。
一番大切なもの、人は守った。
笑って、スカーレット・オーギュスーー後に[白銀の戦姫]と呼ばれる少女はその一度目の生を終えた。
そうしてそれから100年後。
死んだ時と同じ、小さな川の浅瀬で少女は目を覚ました。
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18・
黒田悠月(旧黒猫)
3/13 13:06
>>[[27158430]]
ドスン、と腹に衝撃がくる。
続いて左上腕と胸に。
ごぽりと唇から大量の血が溢れて咳き込む。
急激に霞んでいく片方だけの視界に味方の一人が矢を放ったのが見えた。
後ろに大きく傾いだスカーレットの身体を力強い腕が支えた。スカーレットはすでに暗い視界を見限りなんとか動かせた左手で自分を支えたその人の身体をふらふらぺたぺたと弄った。
良かった。矢は刺さってない。
すべて自分の身体が代わりに受けたのだ。
「………………!」
何か言っている。
けれど聞こえない。
もう、何も聞こえない。
何も聞こえない。見えない。感じない。
だけど構わない。
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17・
黒田悠月(旧黒猫)
3/13 13:05
>>[[27158419]]
スカーレットたちの部隊は元々全部で50人からなる。
それが残ったのは5人。
僅かに5人。
ひらすらに道を駆け抜け、戦場を抜けて小さな森を抜けた。
たどり着いたのは小さな川の浅瀬。
その向こうに見える姿にスカーレットはほっと息をつく。すると忘れていた全身の、特に右肩から腕にかけての痛みが一気に吹き出してきて、顔をしかめた。
痛みには慣れている。
それでも気を抜いた際にふいに襲ってくる痛みというものは存外に辛い。
まさに不意打ちだからだろう。
身体にも頭にも痛みに対する備えがない。
舌打ちをしながら馬を下りた。
血が流れすぎたのか、砂利に足を着
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16・
黒田悠月(旧黒猫)
3/13 13:04
>>[[27158404]]
「……お前!それっ」
いつくもの戦場を得て、それなりの経験を得てきたスカーレットには一目でわかった。
わかってしまった。
男の右肩を抉る槍の穂先。
それが太い血管を貫いていることが。
致命傷。
このまま逃げ切ったとしても、もう。
「ああ、ドジった」
血の気のない紫の唇を歪めて男が笑う。
ニヤリと唇の端を上げて言うのはいつも無茶をしてスカーレットが叱責した時と同じ。
「お前は行け。ここは俺たちが時間を稼ぐ」
なにを、と振り向けばスカーレットと共に殿を務めていた仲間の数人が同じく人の群れを抜け、けれども少し走ったところで立ち止まり馬首
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15・
黒田悠月(旧黒猫)
3/13 13:03
>>[[27158368]]
ぶらんと垂れ下がる腕をそのままに、スカーレットは片手で馬を操り頭を低くして後はただ混戦の最中を走り抜けた。
矢がかすったのか、こめかみの上から血が垂れてきて片方の視界を塞ぐ。
スカーレットの全身はもはや血まみれといっていい。それはスカーレット自身の血でもあるし、ここまでに切り結んだ誰かの血でもある。
目の前を首が飛んだ。
見知った顔。
けれどスカーレットはそれを完全に無視した。
唐突に視界が晴れた。
人と馬と武器の群れを抜けたのだと気づいて、一瞬ふっ、と身体が弛緩する。
「スカーレット!」
背後から発せられた叫び声に、スカーレット
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14・
黒田悠月(旧黒猫)
3/13 13:01
ドッ!と音がして、すぐ真横を走っていた馬から人が投げ出された。
ほんの僅か前、視界の隅に映ったのは折れた長槍。
それが肩を貫いて上体が大きく傾いだと思うと視界の後ろに消えていった。
夕べは共に食事をした。
その前も、その前の日も。
食事もしたし、酒も共に呑んだ知己だった。
反射的に向けようとした視線をとっさに前に戻した。
寸前まで迫っていた槍をすでに棒と化した槍で払い上体を横に倒し次に迫る矢を避ける。
「お前の目は特別製だな」
あの人がそう言った目で次々に襲い来る襲撃を避け、槍と槍の隙間を抜ける。
ほんの僅かな、馬で駆け抜けるにはあまりにも細過ぎる隙間。自身の目が指し示す道をひらす
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13・
ANGELUS
3/9 5:50
>>[[27122808]]
いつ見ても人形の様に無表情の彼に、ジニアは息を深く深く吐いていく。
ジニアが息を吐き終えた刹那、熾烈な剛拳と精練な剣戟が混沌を極めるのは、言うまでもない出来事である。
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12・
ANGELUS
3/9 5:49
>>[[27122807]]
武の心得を少なからず持つジニアには分かる。この青年は、ただただ自身の内に宿る無際限の闘争本能に従って強者を探し求め、戦いを挑み、覇道の極致を歩む。それだけが原動力なのだ。異謐さに宿る並々ならぬ猛々しさ。それだけで生きてきた青年。ジニアは確信する。この者の善悪を。自身の中にある天秤の傾きを。審判の結末を。
「……分かった。ならば此処で貴様と戦い、見事私に勝利を収めたなら、拘留程度で許してやろう」
「……俺が負けたなら?」
青年の銀眼に闘志が宿り、ジニアの紅眼に殺意が宿った。白銀の軍服から溢れ出す覇気。幼少の頃に培った武の得心によって身に付けた一つの
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11・
ANGELUS
3/9 5:49
>>[[27122806]]
唐突の不可解な詰問に、一瞬口を噤むが、ジニアは脳裏に蔓延る靄を振り払って紅眼を唸らせる。
「質問するのは私からだ。貴様が犯人だな?」
「ああ」
「複数の窃盗容疑で貴様を逮捕する。そこを動くな」
「盗んだ物なら返す」
淡々とした会話の中で、銀髪の青年は手から一枚の鏡を錬成したと思いきや、その鏡は独りでに姿見に変貌を遂げた。その姿見の向こう側には有る筈のない盗品の数々が映っている。全て贋作にすり替えられたものだ。だが、それが何だと言うのか。
「貴様の罪状は変わらんぞ」
「どうでも良い。俺の質問だ。この場で強いのはお前か?」
「……それを聞い
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10・
ANGELUS
3/9 5:48
>>[[27122805]]
秘匿回線に表示される情報を基に、ジニアは屋上を疾走する。走る事数十秒。遂に犯人と思わしき青年を目視範囲に入ると、ジニアは思わず目を丸くした。未だ日の照らぬ宵闇の中で、星空の光を全反射し、最早吸収している様に見えてしまう程の銀髪。それはまるで鏡面。銀髪そのものは珍しくないが、青年の銀髪は鏡が毛となって頭から生えたかの様な、尋常ならざる異質さを放っていた。自分の足音に気づいたのか、青年は自分の方へ身体を向ける。宵風で鏡面張りの銀髪をさらさらと靡かせながら、青年の銀眼がジニアの紅眼と交差した。瞳の色まで鏡の様に煌びやかで麗らかな銀。眼の中に鏡を挿している様で
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9・
ANGELUS
3/9 5:48
>>[[27122801]]
いつも通り贋作にすり替えたなら監視のエージェントが気づくのは朝以降になるだろうし、誰も犯人を見つけられない可能性もある。ならば態と紛失させたと自分等に思い込ませれば、現場は動かざる得ない。従ってジニアは敢えて犯人の思惑に乗る事にしたのだ。今回が犯人の姿を垣間見る千載一遇のチャンス。未だ自分等は、犯人の姿形すら見ていないのだから。
「大佐ッ。探知系魔法に感あり。三時の方向、屋上です!」
「特徴」
「身長百六十五センチ前後。推定性別……男性。年齢は……十七歳前後!」
「私が先行する。監視エージェントは戦闘配置を指示して待機」
通信エージェントの返
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8・
ANGELUS
3/9 5:48
>>[[27122799]]
アプローチが多種多様、何も超能力は物理的な破壊性能だけではない。従って防壁を通過されている可能性は大いにあり得るのだ。だからこそ探知系魔法を多重に発動させ、位置を割り出して攻める。だが仮に犯人が自由自在にすり抜けられるほどの力の持ち主だったとして、今更探知系魔法を使うのは遅いのではと考える者もいるだろうが、通信エージェントの台詞を思い返せば探知系魔法の使用は決して無意味ではない。今までの盗難被害では盗難された物品は、限りなく近い本物に似せた偽物にすり替えられていた。対抗組織の鑑識が一瞬なりとも本物だと見誤る程の偽物に対抗組織全体が度肝を抜かれたのを確か
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7・
ANGELUS
3/9 5:47
>>[[27122797]]
霊壁のクリアランスはレベル六。霊弾頭兵器ーーー霊的エネルギーを大量に含んだミサイル兵器ーーーの直撃に耐えうる物理防護性能と魔法的に対する完全防護性能、超能力的干渉から大概を防護出来る防壁を美術展全体に展開している。物理的突破はほぼ不可能と言っても良い軍事作戦用の防壁を使用している以上、クリアランスレベル六の防壁を通過しての盗難は至難である。砲台や高角砲、対物ライフルによる遠距離射撃は認められない事から、物理的に侵入したわけではない。魔法的な干渉は防壁で完全防護されているので魔法や魔術の類もあり得ない。だとするなら可能性は一つ、超能力による干渉である。超
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6・
ANGELUS
3/9 5:47
>>[[27122796]]
全ての場合に対応できるエージェントを配置している。これは警察組織が有するあらゆるエージェントでは導入不可能な、対抗組織ならではの用兵能力である。一人一人の能力は高いため、大量の人員を必要とせず、最低限度の人員を配置する程度で問題無く、後はその監視エージェントと数箇所に配置した通信拠点を担う通信エージェントの連携と総指揮官である自分の手腕次第である。ジニアは霊子通信を発信した通信拠点に着くと、拠点に待機していた数人の通信エージェントの視線が一気に自分へと集まる。
「……犯人は既に侵入した模様」
「不備を報告」
「展開された霊壁には異常無し。ただし国
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5・
ANGELUS
3/9 5:46
>>[[27122795]]
正義には正義を執行する者の思想があるのなら、悪には悪を執行する者の思想が必ずある筈である。ジニアは滑稽だと言わんばかりにか細い笑みを漏らす。悪には悪を執行する者の思想が必ずある、そんなもの、仮にあったとして誰しも考えようとはしないだろう。悪とは排除されるべきものであり、見つけられ次第滅びるべきもの。その所以や思想を加味する必要など何処にも無い。世俗は元より、対抗組織のエージェントの大半も同じ考えだ。上官の命令に従い、任務をこなす。独自の正義観、善悪観を持って任務をこなしたり、況してや変哲の無い日常生活を送る者は尚更だ。馬鹿げている。誰もが嗤い、罵り、嘲
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4・
ANGELUS
3/9 5:46
>>[[27122793]]
まるで自分に言い聞かせる様に、強く拳を握った。国家の威信。国防本部の名目。当然それ等も大事であるし、今日までそれを棄て置いたことはない。だが自分が此処に立つ理由ははっきりしていた。この世の善悪。本当の善と悪は何なのか。当然他人の物を横取りする、窃盗と言う行為は悪であるが、問題はそこではない。自分が知りたい側面。それは正義の味方も悪の敵も決して考えない、考えようとしない事柄だ。悪行を行うならその者は列記とした悪人であり、そう認識するのは摂理である。とは言え世俗が悪と罵るのなら、それは本当に悪なのだろうかと言う疑問は対抗組織に所属する以前から問い続けて来た
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3・
ANGELUS
3/9 5:45
>>[[27122791]]
「来るなら来い。今日が貴様の最後だ」
白銀の軍服に身を包む、紅眼の少女ーーージニア・セリ・ノウゼンカズラは本部より支給された戦力を動員し、国内で最大手と目される大規模国立美術展の警備を任されていた。数週間前より国内にある様々な骨頂品や貴重品類を保管する機関ーーー銀行、美術展、宝石展等ーーーが、軒並み盗難被害に遭い、民間の警備や一般犯罪を取り扱う警察組織では全く犯罪の歯止めが出来ない難事件であるとして、自身が務める国防本部の通達により事象犯罪ーーー超能力及び魔法類によって引き起こされる特殊な犯罪ーーーを主に対処する対抗組織に所属している自分等に、一切の
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コメント
2・
ANGELUS
3/9 5:45
「周囲の警戒を怠るな」
はっ、と青黒い服装をした男達の返事が建物内を反芻する。腰まで垂らす茶髪を靡かせ、白銀の軍服が満月の光を反射して煌びやかに輝く。よく見ると青黒い服装している男達は皆、一定以上の殺傷力を有する武器を所持していた。それも規則正しくどれも同じ規格の武器を。小型のハンドガンを腰に携え、寸分違わない統率の取れた敬礼を、目の前の軍人と思わしき人物へ向けている。客観的に見て青黒い服装は警官を連想させるが、警官にしては全員がまるで特殊な訓練を受けているかの様に、あまりに武骨で、あまりに精錬されていた。だがそれ以上の存在感を放つのが、紛れもなく彼等の前に立つ白銀の軍人。右の腰には剣を。左
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「船長、大変です」
曰く、誰か降ろさねば転覆してしまうらしい。
私は新入りの一番太ったの男の肩を叩いた。ああ、嘆かわしい。けれど誰かがやらねばなるまい。
「船長!」
しかし、サンタマリアはまだ沈む。この船の浮力を保つにはまた誰かを降ろさねばなるまい。
私は十年連れ添った船員の肩を叩いた。ああ、嘆かわしい。けれど誰かがやらねばなるまい。
「船長! まだだ!」
ああ、なんたる不幸。私は続いて航海士、副船長の肩を叩いた。ああ、けれど、誰かが。
そして、この船には私一人になった。
ザブン