まさかの、全部が正解かーい❗ そこまでの深読みは出来なかったなぁ
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@りかりー:『片割れの恋』 妹は明るく人付き合いが上手で笑顔が可愛い。 引っ込み思案で人見知りのわたしは同じ顔をしていても可愛いと言われたこともない。 わたしと妹は、同じ遺伝子を持つ双子。 それなのに性格は全く違う。 「かおりちゃん可愛いよなぁ。彼氏いるのかなぁ?」 「今はいないって言ってたっけ。俺、立候補しよっかな」 「おい、抜け駆けすんなよな」 クラスの男子が窓辺に集まって妹を見下ろしてる。 ほら、妹はみんなの視線に気づいてこっちに向かって笑って手を振ってる。 それを見てたわたしとも目が合って慌てて目を逸らす。 「おまえの妹、すげー人気だな。ファンクラブまであるんだって?」 隣に立って窓枠に手をつき外を見下ろしたのは、成績優秀、運動神経抜群、学校一のイケメンで───わたしの天敵だ。 天敵である樹は、幼い頃からの腐れ縁で、事あるごとにわたしをからかい、それを生き甲斐としている。 「おーお、ありゃ告白タイムかな?」 窓の外を眺めながら樹はそう呟いた。 「告白されてもかおりは断るよ。好きな人いるもん」 「へえ、好きな人いるんだ。ふーん」 妹の好きな人はわたしの目の前にいるわたしの天敵の樹だ。 樹はちらっと周りを見ると、口の端を上げわたしの耳に息を吹き掛けた。 バッと耳を押さえる。 「エルの本当の姿をみんなが知ったら驚くよな。髪をほどいてメガネをはずせば妹よりも可愛いってこと」 「!!」 「バラそう、かなー」 熱くなった耳をペロリとなぶられた。 髪を一房掬い取られてくるくるする。 これだから樹は。 「わたしはひとりがいいの。もうあんな思いはたくさんだもの」 「……それは、見る目のない男を選んだからだろ」 そう。 わたしを好きだって言ってくれた人は、妹に心変わりをした。過去の事だけど、わたしは深く傷ついた。 あの時、樹がそばにいて泣いてるわたしをずっと抱き締めて慰めてくれた。 それは、樹に感謝はするけれど…… なぜにフラれた直後から距離感が近いのか。 「おまえ、まだ……あいつのこと……」 「え?」 「……なんでもない」 髪を弄ったまま樹はわたしから目を反らした。 ひとりでいるのが当たり前になってたある日。 突然、わたしの前に高級車が停まり、後部座席からひとりの男性が降りてきた。 「俺と付き合ってくれないか?」 わたしは頭の中が真っ白になった─
えるどらど
ご無沙汰しております。 お体は大丈夫でしょうか? またミニ話を読めて、とても嬉しいです。
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@りかりー:つづき 「体……弱いくせに、走るなよ」 月に一度は熱を出しては寝込んでた。 忙しい両親の代わりに俺が面倒を見ていた。 いつからだろう? クラスメートにいじめられても俺がそばについていてやらなくてもよくなったのは。 遠い過去を思ってると、 ぐらりとよろけ、アイツが膝をついた。 その顔色は真っ青だ。 「アイツ……」 屋上から階段を駆け降りて校庭へ走ると、その人垣の中から奪うと抱き上げた。 「鷹先輩!?」 「えっ!うそっ!」 呼吸が浅く速い。白い顔が苦しげに歪む。 貧血か…… 医務室に運び込むとベッドに寝かせジャージの前を寛げた。 瞬間、首からするりと掛けられてた小さな袋が落ちた。 幼い頃から下げていた御守りの中身がはみ出て見えた。 ……オモチャの指輪? その時、医務室のドアが開いた。 立ってたのはコイツのいとこ。俺の天敵だ。 僕が看るから帰っていいと、追い出そうとして俺の手にある御守りに気づいた。 「それは……」 奪うように取られた御守り。 その中身のことを知っていたのか。 天敵。 俺から平気でコイツを奪ってく。 「鷹、おまえにえるどらどは渡さないからな!」 それは堂々とした宣戦布告だった─── 後編へ(次回、10月後半のミニ話へ)
えるどらど
いつも有り難うございます。 しかーし、また気になるところで終わるんだから… 続きを首を長くして待っております(*゚ε´*)
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@りかりー:えるどらどさん、こんにちは! いつもたくさんの応援ありがとうございます。 お礼にミニ話をプレゼント!(*´∇`*) 『ドS上司に飼われました!』 「おまえの席はここだ。何か文句でもあるか?」 ないです。ないです。全然ないです。 ありますって言ったら、何をされるかわからないもの。 「たとえ、文句があったとしても変えるつもりはないがな」 口の端を上げて意地悪く嗤うのは、わたしが配属された先のイケメン課長、冴木徹。 すべての女子社員が狙っているほどの大物。 わたし(える)は入社試験の時に、遅刻しそうになって慌てて飛び乗ったエレベーターで、上司を押し倒すというヘマをやらかした。 それも押し倒しただけじゃなく、くちびるが触れてしまったという……(悲しいかな、わたしのファーストキスの相手でもある) わたしの机。 なんたって冴木課長の真ん前に置かれた。 みんなの机は課長から少し離れたところにあって、左右に5人ずつ並んでるのに。 入社試験の面接官だったと、面接室で顔を合わせた時には絶望した。 絶対に落ちると思った。 それなのに、なぜか受かって今はここにいる。 ある意味、この状況も絶望だけど。 「おまえには俺のサポートとしてついてもらう。反論は許さない」 「あの、でもそれは」まずいんじゃ…… 「反論するなと言ったろう。早速だが出かける。ついてこい」 社内の研修期間を無事に終えて、配属された当日。 席に座らないうちに冴木課長が上着を持った。 今すぐなの?うそ! 「何してる。早く来い!」 みんなの憧れの冴木課長。 その課長がオロオロするわたしにこめかみに青筋を立てた。 「は、はいっ!」 慌てて冴木課長の背中をついていく。 と、ヒールが滑って、 「きゃあっ」 振り返った冴木課長の胸に飛び込んでしまった。 「おまえは、俺に何か恨みでもあるのか💢」 怒れる冴木課長のシャツには、わたしの淡い色のくちびるの跡がしっかりとついていた。 怖い冴木課長。怯えるわたし。 正社員1日目のわたしは、早くも冴木課長の怒りを買ってしまった。 「おまえ、いい度胸してるな」 目の据わった冴木課長がいた───
えるどらど
王道中の王道ともいえるオフィス物。 楽しみです。
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@りかりー:りかりーと申します。 いつもたくさんのお星さまありがとうございます。 お礼にミニ話をプレゼント! (*´∇`*)感謝!! 『オレの可愛いシモベ』 校門の前で男共の人だかり。 その人だかりを見て、嫌な予感が……まさか、な。 だが、そのまさかで、男共に囲まれて顔を真っ赤にしているオレさまのシモベがいた。 オレが出ていくと、男共が振り向いて慌てて道を開けた。 ギロッ 男共を睨んで、凍りついた輪の中心から、シモベの腕を引いて連れ出した。 なにが「可愛いよな💓」だ! 可愛いに決まってるだろ! このオレが手塩にかけて育てたんだからな! ふたつ下のオレのシモベ。 シモベはオレの本音を知らない。 「こ、これ、しーちゃんに渡したくて」 そう言って、おずおずと差し出したのは、白と茶のどうぶつの型抜きクッキーたちだった。 摘まもうとして、すっ、横から手が伸びてきて、クッキーをつまみ食いした。 「ん!甘さも控えめ。サクッと感も申し分ないな」 オレを怖がらないヤツがひとりいた。 オレの睨みにも平然としてシモベのクッキーを食っている。 「今度は俺のために作ってよ」 シモベはオレを見上げ途方に暮れたような顔をする。 作らせるわけないだろが。 クッキーひとつ取られただけでこんなにムカついてるのに。 「シモベちゃんって、いいよな」 そう言われて、頬を赤く染めるシモベはオレの袖をぎゅっと掴んでる。 「なあ、静也。そのシモベちゃん、俺に譲ってくれない?静也の言うことならなんでも聞くんだろ?」 聞いた瞬間、シモベの顔色が変わった。 傷ついたシモベの表情に頭の芯がぶちギレる。 昔、シモベを傷つけオレから取り上げようとしたヤツがどうなったかみんなが知ってる。 オレの逆鱗に触れたらどうなるか。 頬を一発殴って胸ぐらを掴んだオレの背中にシモベがしがみついた。 「しーちゃん、ダメ」 ぴくっ 「それ以上殴ったりしたら、しーちゃんの手が傷つくから……」 魔法の言葉だ。 呪いが解けてくように力が抜けてく。 シモベには敵わない。 オレの大事な可愛いシモベ。 オレは、える、おまえにホレてる。 完
えるどらど
いやいや、こちらがホレてまうやろー!! 最後の一行の破壊力、半端ないわ♡♡
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@りかりー:つづき 月野さんに抱き着いた大人気アイドル。 月野さんは彼女はいないって言ってた。 それなのに、どう見ても恋人同士にしか見えない。 ショックで涙が溢れてくる。 泣く権利なんてないってわかってるのに、止められない。 「えるっ!!」 掛けられた声を振り切り、海の家を飛び出すと、宛もなく夕暮れの海辺を歩いた。 月野さんに抱き着いた彼女の嬉しそうな表情が頭から離れない。 胸が苦しくて涙が止まらない。 岩場まで歩いてきた時、躓いて海へと落ちてしまった。 深いっ!泳げない……息が、できないっ! もがけばもがくほど苦しくなってく。 手足に力が入らなくなって沈んでく…… もうダメ…… 諦めかけたその時、誰かに抱えられ海から引き上げられた。 胸を押されてくちびるから空気が入れられる。 ゴボッ、ゴホッ 目を開けると、目の前には濡れた月野さんがいた。 海に飛び込んで助けてくれたのは月野さんだった。 「……月野、さん?」 掠れた声で呟くと、強く強く抱き締められた。 「俺が好きなのは、える、おまえだ」 耳元で告げられた声にわたしは顔を上げた。 「おまえはここからいなくなるのに、ホレたらダメだってわかってたのに、……気持ちはもう抑えが効かなかった」 「……でも、アイドルの」 「あれは、妹だ」 え、いもうと?アイドルの梓が、妹……? まさかの妹だと知って力が抜けた。 くったりとしたわたしを優しい腕が抱き上げた。 その日の夜、月野さんの腕の中で目覚めたわたしは、海の家は月野の兄のもので、兄が不在になってた二週間だけ手伝っていただけだと衝撃的事実を知らされた。 更に、月野さんとわたしの住んでる場所がすぐ近くだとわかって同時に驚いた。 「向こうで、また会えるな」 月野さんとわたしは、青い空と海の前で笑顔で指切り、海の家を後にした。 完
えるどらど
ふうぅ、落ち着くとこに落ち着いて良かったv(=∩_∩=)
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@りかりー:つづき、2枚目です。 七夕。 それは、一年に一度だけ、愛しい者と会える日。 遥か天の川を渡って、たった一晩かぎりの逢瀬。 それでもいい。 君の元気な姿をひとめ見ることができるのなら。 あの時言えなかった言葉を伝えることができるのなら。 たったひと言。君に。 七夕まつりの夜。 あの時と同じ浴衣に袖を通して、 あの時と同じように出店を抜けて、 あの時と同じように高台へ登って、 あの時と同じように打ち上がる花火を見た。 花火はもうすぐ終わる。 そして、俺の恋も終わる。 静かに目を伏せる。 打ち上がる花火の音が、最後の恋を散らしていく。 カラン 不意に、微かな下駄の音がして振り向いた。 「よかった。流星くんがいてくれた。……っ!?」 鮮やかな光の色に照らされた牡丹柄の浴衣。 君の面影を濃く残す大人になった笑顔。 振り返ると同時に駆け出して、この腕に抱き締めてた。 もう二度と会えないと思った。 もう生きていないかもしれないと苦しかった。 「約束したよね。5年後に会おうって」 ああ、言った。言ったさ。 病気でこの街を去らなきゃいけないって知って、どの街へ行ってもいい、君に生きてて欲しいと思ったんだ。 「わたし、頑張ったんだよ。流星くんが七夕まつりで会おうって言ってくれたから」 華奢で細い体。 たくさんたくさん頑張ったんだろう。 抱き締めきれなくて、もっともっと抱き締めたくて腕に力をいれた。 今夜、この一瞬でいい。 君に会えたキセキ。七夕の奇跡。 「流星くんは……いつも温かかったね。うわべじゃなくて心が。こんな風に」 背中に腕が回されて、君が目を潤ませ頬を擦り寄せた。 あの時と同じ優しい香りがする。 片時だって忘れられなかった。 子供の恋だと笑われようとも。 君に会えた。 5年前、あの夜に言えなかった想いをすべて伝えるよ。 ずっとずっと好きだったんだ。 「もうどこにも行かせない……える、二度と離さない」 最後の大輪の花 夜空の星たちがふたりを照らしていた─── 【完】
えるどらど
『二度と離さない』一生に一度は言われてみたい ← 無謀な願望っす
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@りかりー:3枚目 彼女と一也と見合せる? 聞いた瞬間に頭が真っ白になった。 今、彼女がはにかみながらも楽しそうに話しているのが一也だ。 紹介? そんなことをしたら付き合うに決まってる。 俺の紹介なら、奏の仲間ならば断れるわけがない。それくらいわかる。 「なあ、帯刀、どう思う?」 奏が笑いながらも本気顔で問う。 「……いいんじゃないか?」 「ふーん、わかった。ならこっちで段取りはする」 戸惑う俺に、奏はやけにつまらなそうに呟いた。 その一週間後。 彼女は眉を下げて心細そうに俺を見上げた。 一也と初めての公認デートだ。 彼女の頭を撫でてやりながら声を掛けた。 「泊まるなら、連絡くらい入れろよ」 「と、泊まりだなんて、そんな」 彼女は慌てて首と両手を振り、迎えに来た一也の車に乗ると出掛けて行った。 日が暮れる頃になって、奏が酒を片手にふらりと訪ねて来た。 「あの子、今頃は一也と食事かな?」 「さあな」 「海に行くと言ってたからな。眺めのいいホテルを予約してやった」 「……は?」 「当然だろう?付き合ってるなら」 なんてこった!泊まりだと!? 酔いなんて吹っ飛んだ。 立ち上がるとテーブルにあった車のKeyを掴んだ。 「間に合えばいいけどな。ほらよ」 奏がスマホを投げて寄越した。 わけもわからず、いても立ってもいられない。 車を飛ばし海へと向かう。スマホ画面にはホテルの予約が記されていた。 気づいたんだ。 失えないと。おまえを誰にもとられたくない。誰にも触れられたくないと! 「えるっ!!」 正面に車をなげて駆け込み、最上階で食事をしていた彼女の腕を掴んで連れ出した。 「帯刀、さん?」 無我夢中で抱き締めた。 「やっと気づいたんだ。俺はおまえを最初から。俺を助けてくれたあの日から」 ───好きだったんだ 【完】 「一也、おまえをダシにして悪かったな」 こうなることは初めからわかってたと、奏は酒杯を傾けながらひとり笑った。
えるどらど
ふうぅ、落ち着くとこに落ち着いて良かったよ。 しかし、どのワードがNGで引っ掛かるのかしら? 基準が謎過ぎますね。
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@りかりー:毎日応援ありがとうございます。 お礼にミニ話をプレゼント! 『若恋』初恋 降りしきる雨の中、 「帯刀、おまえいつか女にササレるぞ」 俺は、大神奏から呆れ顔で言われてたことを思い出していた。 遊びに遊んだ、自業自得か。 「それにしても、くそっ、いってぇな」 腹を押さえて歩き続け、痛みが増してすぐそばの塀に寄りかかった。 「あのっ、大丈夫ですか?」 降ってくる声に目を開けると、開いた傘を俺に差し出すエプロン姿の若い女がいた。 目の前はオンボロアパート。そこの住人らしかった。 「少し休めば大丈夫だ」 「あの、でも、それ、ケガして」 彼女が俺の腹を見て顔を青くした。 人を呼ばれても困る。 立ち上がり歩きだそうとしたが、体が言うことを効かない。めまいまでしてきた。 「わっ、どうしよ。あのっ!」 慌てる彼女を前に、俺は意識を失った。 ※※※ 「気がついた、よかった!」 消毒薬の匂い……ここはどこだ? やけに古くさい部屋で俺は目を覚ました。 どうやら、傷の手当てをしてくれたらしい。 腹に触ると包帯が巻かれていた。 「悪いな、迷惑かけて」 「いいの、困った時はお互い様だから」 彼女は柔らかく笑った。 あいつらは帰らない俺を心配してるだろうが、ここには呼びつけたくなかった。 彼女の言うように、少し動けるようになったら出ていこう。 そう思って目を閉じた。 毎日、傷口を消毒し換えられる包帯。 俺に何があったのか聞かない。それも心地よくて甘えていた。 あいつらには無事だとだけ返し、しばらく放っておくように指示を出した。 ある日、アパートの前でガラの悪い声が聞こえ、俺が戸口で怯える彼女の隣に立つと、男は姿を消した。 「悪い男にでも引っ掛かったか?」 「そうじゃないの……だけど」 言葉を濁す彼女には何か事情があるんだろう。 そして、2週間後。 俺は迎えに来たあいつらの前で、 「困ったことがあったら俺を頼ってこい」 と、胸元から外したものを握らせた。 「これ……」 「俺は大神組の帯刀。……助けてくれた恩は忘れない」 彼女は寂しそうにくちびるを噛んだ。 けれども、すぐに顔を上げて笑顔を見せてくれた。とても優しい笑顔だった。 そして、一年後。 俺を助けてくれた彼女が、龍神会の『競り』にかけられることを知った。 「どうして、えるが……」 2枚目につづく
えるどらど
最後の一行にドキっとしちゃった←いや、自分が競りにかけられるわけでは無いんだけども・・・
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@りかりー:りかりーと申します。 いつもわたしの作品に応援ありがとうございます。 お礼に、『若恋裏話、日記etc』1?2?に連載中のミニ話の続きを送ります。 よかったら、詠んでみてね。 続き そんな他愛のない話をしながら、狐月はわたしの膝の上に頭を乗せて眠りに落ちる。 宝珠がわたしの中にあるから、そばにいると安心して眠れるらしい。 わたしも狐月に拾ってくれた恩を少しでも返したくて、眠りにつくまで宝珠のある左手で頭を撫でる。 狐月の頭の上の狐耳は柔らかくて、触れていると気持ちがいい。 ふさふさ揺れるたくさんの尻尾も本当は触りたいけれど、さすがにダメだろうな。 「触れてもいいぞ。少しだけならな」 なんで触りたいと思ったのがバレてるんだろう? でも、お言葉に甘えて触れてみる。 「なんだろうな、ただそばにいる、それだけで眠れるなんて。ああ、宝珠からの香りがするからか。桃の花の香りだ」 うとうとし始めた狐月は疲れているようだった。 七尾から聞いた話しによると、政務が大変らしい。 風邪をひいたらいけないので、わたしはたくさんの衣を引き寄せて掛ける。 その手を狐月につかまれた。 「俺の宝珠……」 琥珀色の宝石。狐月の瞳と同じ色。 できるなら宝珠を返してあげたい。 わたしから妖力を取り出せたらいいのに。 わたしは眠る狐月にそっと囁いた。 「ごめんね狐月。いつかきっと宝珠を返せると思うから待ってて。……おやすみなさい」
えるどらど
いつも私にまで有難う。ミニ話を読むの楽しみなんですよ✨
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@りかりー:続き 「昨日の夜、夢を見て……」 「夢?それはどんな夢なんだ?」 口ごもったわたしに空兄ちゃんが席について心配そうに言った。 「眠ってたらキスされた夢」 告げた途端に3人とも飲んでいたコーヒーを吹き出した。 「なっ!」 慌てるお兄ちゃんたち。 「そ、それはすごい夢だな。で、相手は?」 陸兄ちゃんが唾を飲み込む。 わたしは首を横に振った。 「わからない」 「それは、夢だろ?夢だものな。うん、夢だ、な、海」 「………ああ」 空兄ちゃんが海兄ちゃんに同意を求め、海兄ちゃんはむすっとして答えた。 「それって、気になる人がいるからそんな夢見るんじゃねえのか?」 突然、陸兄ちゃんが真剣な表情をしてわたしを見た。 「俺がその相手だったら嬉しいんだけど?」 え?よく分からない。どういう意味? 「陸!それ以上はよせ!」 空兄ちゃんが止めるも止まらない。 「本当の兄妹じゃないってはじめから知ってて、今さら妹になんか見れるかよ。空兄も俺もずっと───」 その瞬間、鈍いわたしでも知ってしまった。 陸兄ちゃんがわたしのことを憎からず想ってるってことを。 そして、空兄ちゃんも。 じゃあ、昨夜のキスは夢じゃなくて、現実? キスは空兄ちゃん?陸兄ちゃん?だったの? 海兄ちゃんじゃなくて? 「俺たちはえるのことを大切に想ってる。でもそれは押し付けじゃない。おまえはおまえの恋をしていい。……昨日の夜の相手は俺だ」 空、お兄ちゃん……? 全員が固まった。 『あのキスは俺だよ』 お弁当に詰めかけていた卵焼きが床に落ちた─── 後編へ続く
えるどらど
いつも有り難うございます。 さぁて三人はどんな顔かなぁ?なんて想像が膨らみます。
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@りかりー:りかりーと申します。 こんばんは! 毎日たくさんのお星さまありがとうございます(*´ω`*) お礼にミニ話をプレゼントφ(゜゜)ノ゜ いつも本当に感謝です! 黒豹の恋(後編) 転入してからしばらくして。 廊下を歩いてたら、「ちょっと待て。おまえ、強い気配がしてる」と、有王先輩に顔を覗き込まれた。 「この気配、あやかしに取り憑かれているのか。かなり、ヤバそうだな。すぐに祓わないと……これを見ろ」 有無を言わせず先輩の出した紙切れを見せられた瞬間、体に力が入らなくなって意識が途切れた。 ※※※ 気がつくと、大きな屋敷の庭に座らされ、有王先輩が護摩を焚き呪を唱えていた。 「ここは……?」 「俺の家だ。いいか、見てろ。おまえに憑いているモノを引き摺り出す」 そう言って、唱えた呪の炎の中から現れたのは、漆黒のしなやかな体を持つ獣だった。 護摩焚きの前に、悶え苦しみ転がり出る。 その姿が、転がりながら黒豹へ、お兄ちゃんの姿へと変わってく。 「見ろ、正体はあやかしだ」 有王先輩に現実を突きつけられ、驚きでお兄ちゃんが伸ばした手をつかむことができなかった。 そして、我に返った時には、黒い獣もお兄ちゃんの姿も消えて、ひとりぼっちに戻っていた。 「これでいい。あやかしは消えた」 「そんな……」 ※※※ あれから、夢に見るのは、会いたくてたまらない人のこと。 お兄ちゃんだった人は、あのあやかしは、本当に消えてしまったの? 月のない夜、ぼんやりと座り込んでいたら、窓辺に一瞬だけ黒い獣の姿が見えた。 「待って!」 あやかしでもかまわない。お兄ちゃんでなくてもいい。 わたしの願いを叶えてくれたのは、あなただから。 「置いて行かないで!わたしも連れてって!」 背を向けた黒豹にしがみついた。 「……きっと後悔する、それでも?」 絶対に後悔しない。 「一緒に生きていきたいのは、あなただとわかったから」 「……える、我についてくるならもう逃がしてやれない。それでも?」 「それでもいい。どこへでも連れてって」 黒い獣から人の姿になってわたしを抱き締めた。 「ああ、どこまでも一緒に行こう」 完
えるどらど
いつも有り難うございます。 〝種族を越えた愛〞も良いもんですね。
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@りかりー:2枚目です。 どうでしょうか? 感謝を込めて送ります(*´∇`*) 『龍神さまの溺愛』続き ※※※ そっと目を開けると、柔らかくて温かい光が全身を包んでいた。 気づくと背中の痛みもいつの間にか消えていた。 「龍神、さま……?」 九尾の狐も鬼の頭領、そして孝太も。 みんながわたしの顔を覗き込んでいた。 「遅いぞ。やっと来たか」 龍神さまの元に戻ってこれた。 みんなのいるところへと帰ってこれた。 「ただいま、……龍神さま。みんな」 泣きたいほど嬉しくて龍神さま、みんなを抱き締めた。 わたしの命を繋いでくれたみんなの思いが体の中で温かく光ってる。 「……龍神さま、少し苦しいです。そんなに強く抱き締めなくても」 わたしの龍神さまは力が強い。 「我慢しろ、……もう少しだけだ」 掠れた声。涙声だ。 本当はわかってる。 龍神さまもみんなも無茶なほどの力を使ってわたしを助けてくれたってこと。 それだけ龍神さまはわたしを失いたくないと思ってくれたってこと。 不器用な龍神さまが誰よりも愛しすぎる。 「さてと、俺は彼女に会いに行ってこようかな。龍を見てたらなんだか悔しくなった」 「え?」 「俺も嫁さんを探しに行こ。どこにいるのかな、俺のマイハニーは。龍、じゃあな」 「えっ?えっ?」 「おっと、孝太も来い。俺がいい女を紹介してやるから」 「えっ?えっ?えっ?」 突然、孝太を引きずるようにしてあやかしたちの姿は消えて行った。 残されたのはわたしたちふたり。 龍神さまはゆっくりと顔をあげてわたしを見つめた。 琥珀の目がとてもきれい。 「……おまえを誰にも渡したくない、えるが、好きだ」 その瞳にわたしが映ってる。 「死にかけた俺を救ってくれたあの時からずっと。……もう、待てない」 触れるくちびる。 甘く約束の時を結ぶ。 「今夜、俺の花嫁になってくれるか?」 真っ直ぐに伝えられた心に、わたしは微笑んで頷いた。 「大好きです、龍神さま」 【完】
えるどらど
いつも有り難うございます。 安定のハッピーエンドで、ほっこりしました(*^_^*)
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@りかりー:えるどらどさん、毎日応援ありがとう! お礼にミニ話をプレゼント(*´∇`*) 「えるっ!!」 崩れるように倒れたわたしを龍神さまが抱え叫んだ。 何が、起こったの? 振り向くと幼馴染みの孝太の手には血の付いた太刀が握られていた。 顔を上げた孝太は焦点の合わない目で、太刀の先を見る。 次の瞬間に、孝太の口から黒い靄が吐き出され、その黒い靄は膨らみ巨大な蛇になった。 「邪神かっ!?」 「龍神になれず邪神に墜ちた蛇め!」 わたしを抱えた龍神さまの手が真っ赤に染まって、命よりも大切にしていた珠が流れてく。 ああ、わたし死ぬのかな。 龍神さまの体が震えてる。それが答えだとわかった。 「待ってろ!絶対に助けてやる!」 九尾の狐が叫び元の姿に戻り毛を逆立てて黒蛇に躍り掛かる。鬼は長い爪で蛇の目を切り裂いた。 孝太は蛇が抜け出ると我に返った。 「俺は、なんてことを!」 「孝太は悪く、ないよ……」 蛇邪神に憑かれただけだもの。 微笑むと口から熱いものが滴った。 「助けて、やる!」 龍神さまの震える声に、 わたしは最期に龍神さまの頬にくちびるを寄せた。 力を失くしてくわたしを龍神さまが震えながら抱き締めてくれた。 静かに目を閉じ、龍珠が龍神さまの手に戻ってく。 お返ししますね、龍神さま─── ※※※ 絶望に打ちひしがれる。 失ったものは魂の片割れ。もう二度とこの手には戻らない。 天を仰いで魂の片割れを手に抱き上げると空へと舞い上がる。 『天よ、叫べ!』 青かった空が一瞬にして雨雲に覆われ雷が落ちる。風が吹き荒れ、雨も雹も地を叩く。 あの心優しい娘に神もあやかしも救われた。 その笑顔に、その小さな手に心が救われた。 それを一瞬で失った。 バキバキドドーンッ 天の怒りと悲しみが黒蛇を貫いて、真っ黒に焦げた黒蛇は粉々になり吹き飛んだ。 龍神に残されたのは、魂を失った片割れの身体だけ。龍神は手の中の娘に頬擦りし、大粒の涙を溢した。 二度と龍の珠は命を繋がない。 それでも龍神は奇跡を信じて龍珠を娘の胸元に置いた。 「俺の尾を分けてやる。必ず助ける!」 「もちろん俺の頭の角もやろう。神力と妖力を合わせればどうにかなるかもしれない!」 「俺だってこいつのためなら!」 皆が龍珠に手を翳す。 奇跡が起こることを信じて…… 2枚目につづく
えるどらど
ハッピーエンドを信じてるからね! 助かるのかな? ドキドキするぅ
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@りかりー:えるどらどさん、いつも応援ありがとうございます!とっても嬉しいです。 お礼にミニ話をプレゼント(*´ω`*) 『龍神さまの溺愛』 あやかしや神様が視えるわたしが拾ってきたのは、人間の開発によって住み処となる川を埋められ弱っていた龍神さまでした。 おばあちゃん家の裏庭に続く、湧き水の出る小さな名もない川にぐったりした龍神さまを放したのが十年前。 そして、現在は─── 「俺の嫁にそれ以上近づくな。いくら幼馴染みと言えど、……おい、わざとくっつくなっ!」 龍神さまは大変ヤキモチ妬きである。 幼馴染みの「視える」孝太と一緒にいるだけで、大空を飛んできては離れろと風に身を泳がせ威嚇している。 孝太とはただの幼馴染みなのに。 龍神さまはわたしが車の事故に遭った時に、大切な龍珠を手離してまで命を助けてくれた。 その龍珠はなんとわたしの体の中にある。 そんなこんなで、龍神さまはわたしから目が離せないらしい。 お昼、学校の中庭で空を見上げてたら、龍神さまが人の姿をして現れた。 白衣を着て見目麗しすぎる教師に。……ほう。 「さっき階段で派手にコケてたな。その傷か」 擦りむいたその手を龍神さまがつかむと口元に持ってく。 傷を直してくれてただけなのに顔が熱くなる。 だけど、次の瞬間に、 「妖狐の……九尾の狐の気配がする」 振り向くと同時に拳を突き合わせたのは、白い九本の尾を持つ妖狐の化けた先生だった。 「残念。龍神を倒せば、こいつは俺のものになるのにな」 「誰がやるか。神たる俺の花嫁だぞ」 そこにもうひとり。 「俺を忘れてもらったら困るな。おまえは俺を選ぶだろ?」 あやかしの鬼、それも次期鬼の頭領になる鬼。 後ろからぐいっと顎を引かれて顔を近づけられた。 キスされそうになって、龍神さまは慌ててわたしを懐に閉じ込める。 「触るな」 美形すぎるあやかしふたりを琥珀の瞳で睨む。 龍神さまはわからないのだ。 龍珠がわたしの体の中にあるからそれが愛情だと勘違いしているだけ。 龍神さまを失いたくないわたしは龍珠を返すと言えないまま…… 「いつになったらおまえは俺に心をくれる?いつまで待てばいい?」 龍神さまの切ない声音にわたしもせつなくなる。 と、龍神さまの顔を見上げた瞬間。 ドスッ、 背中に衝撃を受け焼けつく痛みが襲った。 「えるっ!」 後編へ続く
えるどらど
逆ハーレムか!と、ちょっと羨ましかったのは 此処だけの話・・・
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@りかりー:2枚目 夜、眠る時は鬼の面を枕元に置いている。 寝入ってすぐに部屋に誰かが入って来た気配を感じて目を覚ました。 「誰……?」 薄明かりの中で銀の瞳がわたしを見ていた。 その視線に気づいて慌てて鬼の面を被った。 「顔を隠すな」 夜叉の指がわたしの頬に触れた。 「俺は素顔のおまえを見ていたい」 夜叉はそう言って鬼の面を外した。 夜叉に素顔をみられて顔が熱くなる。 そして、わたしは鬼の面をつけるのをやめた。 それから、半月ほど経った夜。 ガサッ 庭の方から物音がして、 「夜叉……?」 夜叉が遊びに来たのかと思って声を掛けた。 夜叉は昼も夜も関係なく遊びに来るからきっとそうだと思って……けれど。 バキバキッ 目の前で雨戸が大きな何かの爪で引き裂かれて、太い腕が戸を突き破った。 「きゃあっ」 「ウマソウなニオイがスル。クイタイ……」 赤い目をして耳まで裂けた口。 その口からはよだれが滴っている。 頭に角が二本ある大きな体の鬼だった。 「オマエ、クイタイ」 鋭い爪が伸びて喰われそうになった時、 「夜叉っ!!」 思わず叫んでた。 同じ喰われるなら夜叉がいい。他の鬼なんてイヤ! 夜叉はひとりぼっちのわたしと話をしてくれた。一緒に庭の花や木を眺め、時には屋敷から連れ出しては遊びに連れていってくれた。 わたしに笑うことを教えてくれた鬼。そうやって笑ってくれたらそれでいいと言ってくれた鬼。 「オニヨビをクラエバ、オレはモットツヨクナレル」 鬼の爪の先が髪に触れた。その時。 ザシュッ 目の前に伸びた鬼の腕が吹っ飛んだ。 腕のもがれた鬼がのたうち回って床に転がった。 「誰が俺のものに触れていいと言った!この女は俺の獲物だぞ!」 青みがかった銀の瞳が怒りに染まってる。 「ヒッ、タ、タスケテくれ」 助けを乞う鬼の首が跳んだ。 鬼の体は黒い霧になるとそのまま霧散した。 「……夜叉」 「怖かったな……遅くなった」 もう少しで体を引き千切られ喰われそうだった。震えが止まらない。 夜叉の腕が優しくて涙が溢れてくる。 夜叉は人ではない。 だけどそれでもいいと思った。 夜叉は震えが止まるまでずっと腕の中に居させてくれた。 その優しさが今のわたしのすべてだった─── 3枚目へつづく
えるどらど
ミニ話ありがとう。 頼むから最後まで守りきってね。で、二人で幸せになってね。←なんか親目線で見守ってしまう~
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@りかりー:続き2 「知って、たのか」 銀の狼は瞬きする間に傷だらけのお兄ちゃんの姿になった。 力が抜けてくわたしを抱き締め返す。 「こんなバケモノだぞ、俺は」 「それでもいい……姿が変わっても」 目が霞んでく。 大好きなお兄ちゃんをもっと見ていたいのに。 「よせ、もう喋るな!すぐに手当てしてやる!約束しただろう。おまえが16歳になったら嫁にすると。今夜がその日だ!」 欲しくてたまらなかった想いをもらって嬉しくて涙が溢れた。 「うん。……わたし、お兄ちゃんのお嫁さんに、なる」 だから、 「……芝くん、お願い。お兄ちゃんを傷つけないで」 芝くんは殺気をなくして呆然とわたしを見下ろしていた。 「こんなはずじゃ、なかった。俺はただ」 人を守ろうとした。 わかってる。きっとそれが正義。 「ううん、いいの」 お兄ちゃんは人を喰らう恐ろしい妖しじゃないってわかってもらえたそれだけでいい。 微笑むと芝くんがハッとして、 「すぐ治癒の術をっ!」 お兄ちゃんの隣で跪いた。 「なっ!?術が効かないっ。そんな!」 「俺の力をやる!」 地に沈みそうなほど重かった体が、ふわふわと浮き上がる感覚がして目を開けた。 「わたしは……?」 芝くんが深く息を吐いた隣で、お兄ちゃんがわたしを掻き抱いた。 「……もういい」 芝、くん? 「人間を襲わない、喰らわないなら、調伏も必要ない。……傷を負わせて悪かった。ごめん」 肩越しに振り返り苦く笑うと、背を向けて芝くんは部屋を出ていった。 わたしはお兄ちゃんの頬の傷に触れた。 わたしを守ろうとして体にもたくさんその痕が残ってる。 お兄ちゃんは大丈夫だと言ってわたしの手を取るとくちづけた。 「帰ろう、俺たちの家に」 「うん」 銀の狼の姿になったその背に乗って、芝くんの屋敷を後にした。 その5年後。 「うわあ、なんだよこれ!可愛いすぎ!!」 去年生まれたケモ耳の子が芝くんに抱き抱えられてすりすりされてる。 あれから芝くんとは仲良くなってお互いの家を行き来してる。 「将来、俺の嫁にもらう!」 「誰が嫁にやるかよ。絶対にや・ら・な・い」 お兄ちゃんは芝くんの腕から我が子を抱き取った。 こうしてみんなで笑い合えることが幸せで、ずっと続いていくことを心から願った─── 完
えるどらど
まさかのケモ耳の子供で終わるとは・・ 全く予想できなかった。 でもスッキリしたオチで私の心にも爽やかな風が吹いているようです。
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@りかりー:えるどらどさん、いつも応援ありがとう! お礼にミニ話を送ります(*´∀`) 後編 「今夜はこいつを家には帰さない。いいよな?センセ」 芝くんはお兄ちゃんにわたしを連れてくと宣言した。 わたしが好きなのは……でも言えない。 血は繋がってないけど、兄と妹。知られればお兄ちゃんに迷惑が掛かる。 芝くんに強引に連れていかれた先は大きな屋敷だった。 「ここは……?」 「俺の家」 「あの、わたし、やっぱり帰らなきゃ」 キスされたことなら事故だから。 お兄ちゃんにすべて話すと決めて帰ろうとした時、後ろから伸びた芝くんの腕に戸を押さえられた。 「悪いけど、帰すわけにはいかない」 ぐいっ、腕を引かれて部屋の中央に引き摺られた。 そこには床に4つの小刀が刺さっていて、その中に入れられると出られなくなった。 まるで透明な硝子に閉じ込められたみたいに。 「結界を張った。ここにヤツを誘き寄せる」 「芝くん、何を言ってるの?……お願いここから出して」 透明な硝子は叩いてもびくともしない。 芝くんは胸元から出した札を辺りに貼り付けた。 「妖しに魅入られた者を救い、妖しを滅するのが安倍に生まれた者の運命。おまえは妖しに憑かれている。このままだとその身を喰われる。俺が止める」 「……妖し?」 「銀の狼だ。遥か昔から存在する妖し怪の類いだ」 わたしがその妖しに取り憑かれてる? 狼が現れるのはわたしが取り憑かれてるから? 「おまえに浸いてる妖しは強い。仕留めるならここしかない。だから」 芝くんの話しはわかった。 でも……妖し、わたしの前に現れた銀の狼は何もしていない。わたしを慰めるようにただそばにいてくれただけ。 そんな狼を殺めるなんて。 そう言うと、芝くんはすっと冷たい表情になった。 「おまえは何もわかってない。おまえに近づいた者がどうなったのか」 ど、うなった、の? 喉が鳴った。 「階段から落ちたり、川に落ちて溺れた。死ぬことはなかったが。ただ、これ以上野放しすれば死人が出る。それを止める」 芝くんは閉じ込められたわたしの前に立った。 「あの妖しを始末すれば、」 その時突然、雷が空を割って一瞬で辺りが真っ白になった。 雷鳴が轟いて視界が開けた時にはわたしの目の前には背を向けた銀の狼がいた。 グァルルル 2枚目へ続く
えるどらど
いつもありがとう。 おかわり(2枚目)お待ちしております。
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@りかりー:目が覚めると狼の姿はなかった。 幻?幻覚? 部屋には優しかった狼の陽だまりの微かな香り温もりが残ってる。 「もうすぐえるの誕生日だな。何か欲しいものはないか?高価なものは買ってやれないけどな」 お兄ちゃんと朝のごはん。 いつぶりだろう?優しいお兄ちゃんが戻ってきてくれたみたいでとても嬉しかった。 「欲しいものはないよ。そばでお兄ちゃんが笑っててくれるんなら何にもいらない」 欲しいものはひとつだけ。 お兄ちゃんとふたり穏やかに過ごしていきたい。 「欲がないな」 お兄ちゃんが笑う。こんなふうに笑ってくれるなら何も。 ごはんを食べ終わると車で学校まで乗せてってくれた。 車を降りると、後ろから声を掛けられた。 この声は…… 「……芝くん」 昨日キスされた。一瞬で体が動かなくなる。 「妹に何か用か?」 お兄ちゃんの眼鏡の奥の眼差しが凍った。 「俺の女を迎えに来て何が悪い」 「俺の……女?」 だめ、それ以上言わないで! 眉を寄せるお兄ちゃんの前で、芝くんはわたしの肩を引き寄せた。 違う。わたしは芝くんと何も。 ハッとした。 そうだ見られてた。お兄ちゃんに…… わたしはお兄ちゃんを振り返る勇気がなかった。俯いたままその場を後にした。 その日の夕方。 お兄ちゃんと夕食を食べながら、 「安倍 芝だったな。あのガ、……あの男はおまえの彼氏か?」 お兄ちゃんの言葉に心臓が跳ねた。 「彼氏じゃ、ない」 「……そうか」 キスされたのに気づいてるのにお兄ちゃんは何も言わなかった。 わたしもどう言っていいのかわからなくて箸を置いた。 その夜、締めたはずの窓が風に開いていたのに気づくと、優しい香りがしてそばに狼が立っていた。 何故か怖くない。美しい毛並みに顔を埋めると包み返してくれた。 その次の夜も狼は部屋にきた。 頬を優しく舐めてわたしの体を包むように丸くなる。わたしが寝入ると夜明け前には戻ってく。目が覚めた時にはいない不思議な狼。 そんな夜が続いて、わたしの誕生日が明日に迫った時、 「今夜はこいつを家に帰さないから。いいよな?センセ?」 芝くんは挑戦的な目でお兄ちゃんの前に立つとそう宣言したのだった。 うそっ!! 後編へ続く
えるどらど
有り難うございます。 思わず私も、うそっ!?と呟いてしまった。
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@りかりー:続き そう言って、起き上がると高ちゃんを引き剥がしてわたしを引き寄せた。 いつも前髪と眼鏡で隠していた顔がすぐ目の前にある。 幼い頃から変わらない香りが伝えてくれる。 記憶の奥底にずっとあった香りを、石段から落ちた祭りの夜にはっきりと思い出したことも。 このまま失ってしまうかもしれないところまできて思い知った。 みんなとの関係が壊れてしまったとしても失いたくないのは、 ───征太郎 あなただと。 「もう我慢しない。たとえ高弘にだってこいつはやれない」 きつく抱き締められて征太郎のシャツを震える手で握った。 「やっと起きたと思ったら、いきなり告りやがって。……初めからわかってたんだよ。征太郎の気持ちは」 高ちゃんは小さなため息を吐いた。 「何年幼なじみやってると思ってるんだ?ふたりが想い合っていることぐらい気づいてたさ。だけどいつまで経っても進展しない。……そうしてるうち、俺の、俺たちの気持ちだけでもわかれよって、な」 わたしは征太郎ばかり見てて高ちゃんの気持ちにもみんなの気持ちにも気づけなかった。 「高ちゃん……」 「そんな表情すんな。ちゃんとフラれて今度こそさっぱりした。だからって幼なじみの絆が消えるなんて思うなよ。俺たちは死ぬまで離れねえからな」 そう言って、高ちゃんは背中を向けて病室から出ていった。 「……高弘の言ってたそれって、俺のことを好きだってこと?」 「ちが、」 ううん、違わない。 もう後悔したくない。失ってしまうと凍えた時に素直になろうと誓ったから。 その想いを込めて、目を閉じた。 少し身動ぎした征太郎が息を飲んだ気配がして、やがてくちびるに熱いものが触れ角度を変えて甘く息をとめた。 「……俺は、ずっとおまえが幸せになれるんなら高弘に託せるって思ってた。だけど違った。夢でも高弘の腕の中にいたおまえを見た時、その宣言を聞いた時、ぶちギレた」 抱き締められる腕に力がこもる。 苦しいほどの強さに小さく頷いた。 「……わたしの好きなのは、征太郎だけだよ」 そう告げた瞬間に、目の前が反転してベッドに押し倒されてた。 「俺はもう我慢しないって、さっき言ったよ」 征太郎は顔を熱くしたわたしを見て、 「やめてって言っても、やめてやらないからな」 楽しそうに嬉しそうに笑ったのだった。 完
えるどらど
甘酸っぱいなぁ、青い春だよ←おばちゃんの独り言っす
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@りかりー:えるどらどさん、いつも応援ありがとう! お礼にミニ話をプレゼント(*´∀`) 完結編だよ。 わたしは、……幼い頃からずっと一緒の高ちゃんや拳ちゃん、征太郎、直人との関係が壊れてしまうことが怖かったんだ。 だから、無意識に自分の気持ちに気づかないふりをしていたのかもしれない…… そして、誤魔化しきれないほど大きくなった想いは、石段から落ちた瞬間に破裂した。 いつだったろう? 幼い頃に助けてくれたのがその人だって気づいたのは。 だけど、その人は否定し続けた。 それがどうしてなのかずっとわからなかったけれど、なぜなのか今になってわかった。 わたしを守ったことでケガをした傷痕を見て、わたしに負い目に感じてほしくなかったからだって。だから、みんなに口止めして、誰もが教えてはくれなかったんだって。 優しすぎるよ…… こんなわたしを守るために、またケガをしてしまったんだから…… 祭りの夜、石段から落ちたわたしを庇ってくれた人。 いつもわたしの話をそばで聞いてくれた。 隣にいるだけで満ち足りて、わたしにとってはなくてはならない人。 その人を失うなんて、考えたくもない。 「……目を開けて、ねえ」 ベッドに横たわるきれいな顔立ち。 額に包帯を巻いてる下は、わたしが大好きな人の顔。 こんこんと眠りつづけ、まだ意識は戻らない。 「もう2日も経ったんだよ……そろそろ起きて」 声が震えた。 もし、このまま目を覚まさなかったら…… そう考えると、怖くて胸が潰れそうだった。 点滴に繋がれたその腕にそっと触れる。 その腕はいつだって温かくて、何度もわたしを包んでくれた。 それなのに、動かない。 「……お願い、目を」 喉の奥から熱が込み上げてきて涙が溢れてくる。 その腕に涙がひとつ落ちた。 その時、不意にわたしの背後からふたつの手が伸びてきて背中から包まれた。 「おまえが目を覚まさなかったら、えるは俺がもらうからな」 背中からぎゅっと抱き締められる。 その腕は高ちゃんの、そして声。 「俺に奪われたくないのなら、今すぐ目を覚まして文句のひとつでも言ってみろ!」 これは優しさ。 高ちゃんの、みんなからの想い。 ぴくっ 触れてた指が動いて、瞼が少しずつ開いてく。その口元から掠れた声が聞こえた。 「……ふざけんな。……渡すわけ、ねえだろ」 2枚目へ
えるどらど
あうぅ、またいい所で・・・ 文字数制限無しにならないかしら
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@りかりー:つづき わたしのロッカーそばに高ちゃんが立っていたのに気づいたのは偶然だった。 高ちゃんはロッカーのイタズラされたゴミをそっと取り除いて、蓋を閉めると何事もなかったように去って行った。 わたしの知らないところでこうして守られていたことに初めて気づいた。 そのすぐ後だった。 東棟の隅で拳ちゃんが女の子たちといるのを見かけて、立ち聞きするつもりじゃなかったけど、わたしの名前が聞こえて足を止めた。 わたしのロッカーにイタズラしてたのは彼女たちらしくて、拳ちゃんは拳を壁に叩きつけて二度とすんな!って迫力だった。 去っていく拳ちゃんの背中に、こんなにも守られていたのに気づこうともしなかったことを思いしらされた。 『過去の人よりも、現在のみんなを見てほしい』 征太郎の言葉が思い出される放課後。 生物室の戸を開けようとしたら、直人が誰かと話してるのが隙間から見えた。 「隠し撮りなんて趣味悪いことすんな。今すぐ消せよ」 直人が取り上げたスマホが戸口へと転がってきて、見えたのは水泳の授業の水着の画像。 それもわたしのクラスの…… 直人もこんな風に守ってくれてたんだ。 胸がいっぱいになるわたしに、後ろにいた征太郎は頷いてくれた。 その穏やかな眼差しに、みんながどんなに素敵になったのか改めて知って、みんなの想いに誠実に応えていこうって思えた。 そして、数日が過ぎて。 八幡さまの宵宮に浴衣姿で出掛けたわたしたちを、周りのみんなが振り返った。 屋台や出店が立ち並ぶ中で、高ちゃんや拳ちゃんの凛々しさや、直人の柔らかい笑顔にみんなが見惚れてた。 大好きなみんなと、灯籠に照らされた不揃いな石段を登ってく。 「おい、そんなに急ぐなって。神様は逃げねえし」 高ちゃんが笑う。 だって、もう獅子舞いの笛や太鼓、鈴の音が聞こえてる。 走って石段を降りてきた子供たちが歓声を上げて脇を通りすぎる一瞬、どん、と衝撃が来て体が後ろに傾いだ。 え? ぶつかった子供と一緒に空中に浮いた。 「えるッ!!」 スローモーション。 誰かがわたしの名を叫んで、落ちていくわたしを頭から包んでくれた。 この腕を知ってる。 そして落ちてく中、あの時のように朱が散った。 こんなにも大切に守られてたんだ。 ケガをしてもわたしを庇うほど…… そして、意識が投げ出された───
えるどらど
よ~し決着するぞと思ったら 続くったら続く だった・・ うそ~~ん
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@りかりー:つづき 「やっぱり川の水は冷たいよな」 声にハッとして振り向くと、高ちゃんが濡れたYシャツを脱いで絞ってた。その脇腹には何針か縫った傷痕が。 高ちゃんにも傷がある…… その後ろにも同じようにYシャツを脱いでた拳ちゃんの腕にも縫い傷。 そして、イケメン直人には手の甲に傷痕が。 「……どうした?」 高ちゃんの怪訝そうな声にハッとして征四郎から借りた上着を握りしめた。 今、何かを思い出しかけた…… なんだろう?胸がキュンとなるような、切ないような何かに包まれた。 だけどすぐに思い出しかけたものは吹いた風に消えてった。 「川の水でずぶ濡れになっちゃったね。ジャージに早く着替えないと風邪ひいちゃう」 高ちゃんは横を通りすぎようとしたわたしの腕をつかんだ。 「それ、征四郎の上着だろ?俺のを貸してやるから、脱げ」 「な、なんで?」 「好きな女が他の男の上着を羽織ってるのを見て面白いわけない。いつまでも幼なじみのままなんて俺は嫌だ。いい加減に気づけよ。俺はおまえが好きなんだ」 え?……高、ちゃん? 高ちゃんを見上げる。 驚いた。 高ちゃんはいつだって女の子に囲まれて、それなりに付き合ってたはずだったから。 「頼むから俺を見ろよ」 腕の力が強くなる。 征四郎の上着を脱げってそう目が言ってた。 「高弘、抜け駆けなしって約束だったろが。おまえがその気なら俺だって考えがあるからな」 「なんだよ、みんなして。だったら僕だって遠慮しない」 クールで武道派の拳ちゃんに、イケメンで騒がれてる直人。ふたりも近寄ってきた。 「もうわかったよな?俺たちはおまえが欲しい。だからもう遠慮はしない」 衝撃の告白にわたしは頭の中が真っ白になった───
えるどらど
謎が深まった・・・ これだけの情報では〝推し男子〞をきめられない ← 乙女ゲームじゃない との突っ込みはなしで
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@りかりー:いつも応援ありがとう! お礼にミニ話をプレゼント(*´ω`*) 『幼なじみの中の……誰!?』 あれはわたしが小学一年生の夏。 両親や幼なじみ家族4組と行ったキャンプで、ぬかるみで足が滑らせて山の急斜面を転がり落ちた。 「危ないっ!えるどらどっ!!」 誰かの叫び声と共に意識を失って、そして気がついた時にはわたしは病院に運び込まれていた。 4人の幼なじみの誰かがわたしを庇いながら転がり落ちたのと、その人の血が飛び散ったのは幼心に覚えてる。 「ケガさせてごめんなさい。……助けてくれてありがとう」 その言葉を10年経った今でも、わたしは淡い恋に似た気持ちを持て余したまま。 幼なじみ4人の誰もがそれは自分じゃないと言ったから。 両親に聞いても話をはぐらかすだけで何も答えてはくれない。 その人が人懐っこい笑顔の年上高ちゃんなのか、クールで武道一筋の拳ちゃんなのか、それともオタクでボサボサ髪の征四郎なのか、イケメンに育った直人なのか…… 「名乗りでられない理由がきっとあるんだよ。だとしたら捜さない方がいいんじゃない?」 親友のともちゃんにはそう言われた。 「第一、それって助けたのはオレたちじゃないかもよ?記憶違いじゃないのか?」 と、人懐っこい年上高ちゃん。 「熱出して夢でも見たんだろ?」 は、クール武道派の拳ちゃん。 「……………」 前髪で顔を隠した無言なままの征四郎に、 「それよりさ、みんなで川に遊びにいこ!」 爽やかなイケメン直人。 やっぱり教えてくれない。 放課後、誘われて学校帰りに5人で川遊び。 もちろん制服はいつの間にかびしょ濡れで、みんなと水の掛け合いして髪まで雫が滴った。 「征四郎、髪の毛目に入っちゃうよ。少し切ればいいのに。顔だってすごく整ってるのに」 隣の征四郎の前髪に触れた。 その前髪の下には斜めに古い傷があって。 「えっ……?」 驚いたわたしに、 「……制服のシャツから下着が透けて見えてるんだけど?それってわざと?」 征四郎は誤魔化すように顔を背けながらそばに置いてあったジャージを差し出した。 「わざとじゃないもん!」 膨れながらも、受け取り、 気のせい……? 額に傷があるのを隠したかったみたいに感じたのは。 征四郎のその傷は幼い頃自転車に乗って転んでできた傷……だよね? 2枚目につづく
えるどらど
結局 だ れ な ん だぁぁ
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@りかりー:『白虎と過保護な幼なじみ』の別バージョンです(*´∀`) 「えるどらど、ちゃんとベッドに入ってろ。熱が高いんだからな」 幼なじみの慶ちゃんは、わたしを抱き上げてシーツの中に押し込んだ。 「ただの風邪なのに」 「そのただの風邪でよく寝込んでるのは誰だよ。俺がいないと倒れてるだろうが」 慶ちゃんは過保護すぎる。 隣の家に住んでるわたしを妹のように可愛がって、熱でも出すとこの有り様。 「暖かくして寝てろ。おやすみ」 頭をポンポンとすると帰ってく。 ある日、わたしは道で踞っていた白い縞模様の犬を連れ帰って手当てした。 「これ、犬なんかじゃないぞ。たぶん」 慶ちゃんは名前をつけた芝虎(縞模様が虎に似てた)の首根っこをつまみ上げた。 それからしばらくした学校帰り道。 後ろから羽交い締めにされ無理やりに草木の中に引き摺りこまれた。 「や、助けてっ……むぐっ」 押さえつけられたわたしを、 ガルルル 大きな白いものが跳んできて目の前の男をひと噛みして助けてくれた。 「俺が助けに来なかったらヤられてたぞ」 驚くわたしの前で大きくなった芝虎はどうみても人間の青年の姿に変わってく。 月に照らされた姿は芝虎と同じ…… 「見てるだけなのはやめた」 獣の眼差しに見据えられ、わたしの意識はそこで途切れた─── ※※※ 「ウソ……だろ?」 目が覚めた時、慶ちゃんが部屋のドアの前で、こぼれるばかりに目を見開いていた。 「おまえっ!何をした!?」 慶ちゃんは駆け寄ると芝虎からわたしを引き剥がして後ろに庇った。 慶ちゃんに青年の素性を話すと不機嫌な顔をされた。 「芝虎、くっつきすぎだ、離れろよ」 「やだね。こいつは俺のだ」 芝虎と慶ちゃんはわたしを挟んで言い合いしてる。 慶ちゃん、もしかしてわたしのこと……? 「ああ、好きだよ。好きに決まってるだろ。ずっと前から」 耳を赤くする慶ちゃんの思いがけない告白に胸の中が熱くなる。わたしだけが片思いだって思ってたのに。 「誰が好きでもない女の世話を焼くんだよ」 慶ちゃんが芝虎からわたしを奪い取り鼻を鳴らした。 大好きな慶ちゃん。いつだってわたしの特別だった。 「わたしも、す」 好きと言いかけて、くちびるは慶ちゃんのそれに塞がれた。 「いつか、おまえの大事なものもらうからな」 完
えるどらど
選べないと思ってたけど、読み比べてみると断然こっちだった。 どうやら私は、幼馴染み物に特に弱いらしい。
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@りかりー:いつも応援ありがとう! お礼にミニ話をプレゼントφ(゜゜)ノ゜ 『白虎と過保護な幼なじみ』 「えるどらど、ちゃんとベッドに入ってろ。熱が高いんだから」 幼なじみの慶ちゃんはわたしを抱き上げてシーツの中に押しこんだ。 「慶ちゃんは過保護だよね、ただの風邪なのに」 「いいから寝ろ」 慶ちゃんは過保護すぎる。 「ちゃんと暖かくして寝てろよ。おやすみ」 頭をポンポンとすると帰ってった。 ある日、道で弱ってた犬を拾って家に連れ帰って手当てした。 「これ、犬なんかじゃないぞ。たぶん」 慶ちゃんは名前をつけた芝虎(縞模様が虎に似てた)の首根っこをつまみ上げた。 そうして、一緒に過ごして。 学校からの帰り道歩いていたら無理やりに草木の中に引き摺りこまれた。 「や、助けてっ……むぐっ」 押さえつけられたわたしを、ガルルル 大きな白いものが跳んできて目の前の男をひと噛みして助けてくれた。 みると、大きな白いものは芝虎とそっくりで……? 「俺が助けに来なかったらヤられてたぞ。わかってんのかよ」 驚くわたしの前で大きくなった芝虎はどうみても人間の青年の姿に変わってく。 月に照らされた姿は、短い黒髪に青い瞳。芝虎と同じ…… 「俺はもう我慢しない。見守ってるだけなのもやめた。他の男のものになど絶対させないからな。覚えとけ」 くらりとする眼差しに見据えられ、わたしの意識は途切れた─── 「ウソ……だろ?」 隣の家の慶ちゃんが部屋のドアの前で、こぼれるばかりに目を見開いていた。 「慶一郎、おまえこいつが好きだよな。だが、やらん。こいつは俺のものだ」 芝虎は当たり前のように言って、わたしの頬を舐めた。 「いいか、俺はこいつと毎日一緒に寝てる仲なんだ。邪魔するな」 「それはおまえが小さな犬だったから抱いて寝てただけだろ。芝虎、離れろよっ」 白虎から変化して人間の姿になってはふたりでわたしを挟んで言い合いしてる。 慶ちゃんはもしかしてわたしのこと……? 「ああ、好きだよ。好きに決まってるだろ。ずっとまえから」 思いがけない告白に驚いた……けれど、わたしは。 「さわるな、俺の女に。慶一郎の匂いがつく」 そう言って触れられたところを芝虎が舐める それだけで顔が熱くなってくる。 「絶対に逃がさない。死ぬまでおまえは俺のものだからな」 完
えるどらど
あらやだ、両手に花状態♡ 芝虎と慶ちゃん、どっちも良い。 選べへんわ(*>∀<*)
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@りかりー:いつも応援ありがとう! お礼にミニ話をプレゼント(*´∀`) 『小龍の噛み痕』 神さまの御使いで地に降りた時、 小さな蛇だと言うだけで子供らに木の枝で突つつかれ振り回され、理不尽にも殺されそうになった。 子供らに叩かれて鎌首をもたげていた俺は、助けに入った子供を人の子憎さのあまりに思い切り噛みついたのだ。 「……白い蛇さん、みんなが意地悪してごめんね。痛かったでしょう?」 子供は噛まれた腕から血を流しながらも、俺の体から噴き出す血を拭ってくれた。 その小さな子供の噛まれた腕には神に仇なした印が残ってしまったのだ。 子供は俺を守ってくれようとしたのに。 せめて罪滅ぼしにこの子供をどうにかして護ってやらなくては。 そう決意した俺は空から陰ながら見守り、時には人の前に姿を現して、神に仇なした印を持つ子供を守り続けた。 そして、いつしか人の子に抱いてはならない想いを募らせていったのだった─── ※※※ 「お!なんだ?白い蛇がいるぞ!!」 公園の隅で木の枝でつつかれていたのは真っ白な蛇だった。 みんなでよってたかって威嚇する白蛇を追い回している。 ───やめて 白い蛇が傷ついてくのを見ていられなくなって、幼いわたしはみんなの前に割って入った。 ガブッ、 白い蛇はわたしの腕を思い切り噛んで、驚いたみんなは我先へと逃げ出した。 白い蛇はわたしを威嚇するとそのまま草むらへと姿を消した。 そしていつしか、そんな出来事があったことも忘れていった─── 人見知りで友達もいない歴16年。 そんなわたしの前に転入してきたのは誰もが振り返るような容姿の男子だった。 「白瀬です。よろしく」 その瞬間に白瀬くんと目が合った。 イケメンでクラスの女子に囲まれた白瀬くんは、 「俺には好きな子がいるから」 アプローチを断って、出会ったばかりのわたしを見ていた。 どうしてなのかわからないままだった。 階段を踏み外して落ちた時、受け止めてくれたのは白瀬くんだった。 お礼を言うと、 「……助けられたのは俺の方だ」 そう言って白瀬くんは去っていった。 学校からの帰り道、いきなり後ろから羽交い締めにされて草むらに引き摺り込まれた時も、 「……怖かったな。もう大丈夫だ」 震えるわたしを抱き締めてくれたのは白瀬くんだった。 何故かいつも見守っていてくれるようなそんな気がした─── 続く
えるどらど
いいですねぇ、ファンタジーラブの王道って感じがします(*^_^*)
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@りかりー:後編の2枚目です! 届くでしょうか? 『オタクの恋』後編の2枚目 うそ…… 転がっていた棒を掴むと、清四郎はわたしを押さえつけてた佐藤くんを振り飛ばした。 後のふたりが飛び掛かり清四郎の背中を羽交い締めにする。 どうして……ここに? もしかして助けに来てくれたの? 3人を相手になんて無理に決まってるのに。 逃げて!でないと清四郎がやられちゃうっ!! 「ゲーオタをナメるなよ!」 叫んで背中のふたりを振り払う。 横から殴られて清四郎のくちびるが切れて朱が滲んだ。 そのくちびるを拭うと、相手に拳を鳩尾に叩き込み廻し蹴りで地に沈めた。 ハアハア 息を荒くして清四郎は滴る汗のまま、わたしの前にしゃがみこむと猿轡をほどいてくれた。 涙目で見上げるわたしを清四郎の腕がそっと包みこむ。 「……俺から、離れるな」 「せい、しろう……?」 混乱してどうしていいのかわからなくなる。 清四郎の熱い吐息が耳に触れて小さく震えた。 「俺にはえるどらどだけいればいい。見た目が変わったからって寄ってくるような女ならいらない。……いらないんだ」 懇願するような声。 わたしを抱き締める腕に力がこもった。 「……だって、だって、清四郎には好きなひとがいるって」 わたし聞いて知ってるよ。だけど─── 「……ホント、に?」 涙が溢れて止まらない。 清四郎の言葉が胸の奥に染みて想いが競り上がってくる。 「ああ。おまえが好きだ」 柔らかい眼差しが降ってきて、浮かんだ涙を清四郎の指先がそっと拭った。 「………わたし、好き、って、……言っていいの?」 ずっと一緒にいるものだと思ってた。 だけど、清四郎には好きな人がいるって聞いて、……わたしだけが淡い想いを抱えてたんだってショックだった。 だけど、清四郎の恋を応援してあげたくて…… わたし、好きって言っていいの? 清四郎のそばにいていいの? 「おまえじゃなきゃダメなんだ。今までもこれからも俺の隣にいるのは、えるどらど、おまえだけだ」 低くだけど甘さを含む声。 清四郎の指がわたしのくちびるに触れた。 「わたしも、……好き。清四郎が、好き」 瞬間に、清四郎のくちびるが重なった。 息ができないほどの想いが流れ込んでくる。 「やっと、……つかまえた」 わたしの初めては全部、目の前の清四郎に━━━ 完
えるどらど
あぁ良かった。 ハッピーエンドだと信じていても実際読むまでは気が気でないし。 いつも素敵なミニ話を有り難うございます。
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