面倒くせえなあ。アホ。
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私は無意識のうちに反転すると、千津子の上に覆 いかぶさった。 黒目勝ちな千津子の瞳から、美しい雫がひとす じ、頬を伝う。 「私も、英二と一緒に東京に行くけんね」 千津子は静かに笑って言った。 「ああ、そうじゃのぉ……」 言いながら私は、千津子の唇に唇を重ねた。 放縱な女が初めて見せた、無垢な情愛が、私の胸 を打ったのだろう。 私の中からヒロイズムが去り、リリシズムだけが 残った。 交際するようになって一年…… この時ほど、この女を愛しく思ったことはない。 西陽の射し込むうらぶれた部屋で、私達は溶け合 い、ひとつの流線型になった。 千津子のあでやかな嬌声が、清艶な旋律のよう