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「あれ、城崎くん……二次会は?行かないの?」
「後から行く。……ちょっと桜崎と話がしたいと思って。さっきは、席離れてて話す機会なかったから」
久し振りに近くで顔を見て、初めてちゃんと彼の顔を見たような気がした。
付き合っていたとき、私は彼に対して何の関心もなかった。
ただ、求められるがままに身体を重ね、キスをして、形だけの恋人だった。
今では、本当に失礼なことをしたと思っている。
「高木から聞いたよ。看護師として、働いてるんだってな」
「まぁ、資格取ったからにはムダにしたくないしね。良い職場だから、辞めずに働いてる感じかな」
「ちゃんとぶれずに自分のやりたいことを仕事にしてるんだから、桜崎は凄いよ。俺なんて、今は普通の会社員だし」
「会社員も立派でしょ。あぁ、でも城崎くんはサラリーマンって感じだよね。スーツ似合いそうだし」
ただ、世間話だけをするつもりだった。
それで終わると思っていた。
だから、まさかこの後、あんなことを言われるなんて思いもしなかったのだ。
「何か、久し振りに皆でこうして集まるのもたまにはいいよね。皆、何も変わってないからちょっと安心したわ」
「桜崎は、変わったよ」
「え……」
「昔より、綺麗になった」
城崎くんの真剣な眼差しが、私に向けられた。
二人の間に流れる空気が、変わった気がした。
「俺、桜崎と付き合ってた頃のこと、今でもたまに思い出すんだ。あの頃が一番、楽しかったからかな」
「そうなんだ……」
「俺はね。でも、桜崎は俺のことなんて思い出すことなかっただろ?」
「……うん、ごめん」
私が正直に頷くと、城崎くんは苦笑しながら言葉を続けた。
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