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しまったと顔を強張らせるが、ここまで追い込まれてしまったら認めざるを得ない。
逃げ場を失った美月は視線をテーブルに落とすと、観念したようにコクリと控えめに頷く。
顔を伏せたのは、彼の笑顔を直視できなかったからだ。
しみじみと感慨に浸る彼のように、自分はなれない。
過去を振り返るだけで、いまだに苦い気持ちがこみ上げてくる。
幸せだった思い出よりも鮮明に思い出されるのは、別れを受け入れるために会いに行ったときのことだ。
声を詰まらせて悲しみに暮れる情景を思い浮かべるたびに、今でもあの時の自分を抱きしめたくなる。
彼がもし、当時を懐かしい思い出と促えているようなら、きっと彼にとって自分との過去は、取るに足らない、ほんの些細な出来事なのだろう。
所詮、過去の一コマにすぎないのだ。
八年経ったからこそ許される、彼の吹っ切れたような笑顔が、それを証明しているのだから。
俯いたまま唇をきつく引き締める美月の心情などお構いなしに、清宮はさらに話を進めてくる。
「驚いたよ。まさか君がうちにいるとは思っていなかったから。昔と雰囲気が違うから、一瞬誰だかわからなかった」
ピクリと反応した美月は、ようやく顔を上げた。
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