都市伝説

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「お先に失礼しまーす!」  大学一年生の私は勉強とバイトを両立して生計を立てていた。本来なら八時に帰宅できるのだが、この日は客足が上々で閉店時間まで残る羽目になった。結果、店を後にしたのは深夜十時頃。バイトを終えた私は電灯と月明かりが光源の寂しい夜道を一人で歩いていた。 「早く帰ろう」  近年、性的暴行事件が増加している事を私は知っていた。週一回の頻度で報道されれば嫌でも頭に入る。被害に遭った女性の無念は常人には計り知れないだろう。ひとえに運が悪かった、そう解釈される世知辛い世の中だ。しかしこの時の私は、他人事がそうでなくなる瞬間と鉢合わせる事を知らなかった。 「むぐっ!?」  突然、背後から薬品を染み込ませた布を当てられた。頭が朦朧として意識が遠のいていく。周囲に人の気配はない。私達を残して。
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