サーフィング・ウィズ・ジ・エイリアン(セレモニー編「合流」)

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テンションを上げてニコニコと歩く柊と、疲れてとにかくなんでも良いから食べたい燈良。そんな二人を連れて歩く不知火は、歩きながらも忙しそうにナビを操作していた。 「忙しそうですね」 忙しそうだと言いながらも普通に話しかける柊。不知火は彼女の方をチラリと見た。 「幹部二人が業務を放ってエルセルムだからな。少しだけ息抜きのつもりで来たが、そう甘くはなかった」 「たまにはゆっくりしてくださいね」 「そうだな。最近はずっと休んでなかった気がする。 塩崎君、柊ちゃんとは上手くやってるか?」 「はい。今は一緒に技の研究をしたりしてます」 それを聞いた不知火は満足そうに頷いた。 「良い感じだな。君はあの頃よりも強くなった。もはや心配なんて必要なかったな」 「いえ、そんな。まだまだ低ランカーなので、普通にワンパンで死にます」 「北条に何を言われているのかは知らないが、あまり真に受けるなよ。少しずつ強くなっていけばいいんだから。 そしていつか本気で上を目指すときが来たら、その時は一度相談してくれ。君となら、一緒にゲームクリアを目指せる気がする」 不知火の熱く、前向きな発言は燈良にとっては新鮮だ。 ここまでゲームクリアは絶望的だと思わせる要素はいくつもあったが、このように勇気づけるかのような言葉を投げかけられたことはあまり記憶にない。 「えっと、燈良君……」 柊は改めて燈良を呼ぶが、あまり呼び方に慣れていない様子。 「何?」 「そういえば、どうしてクランに入らないの?」 「クランか……。 正直、きっかけを失った。最初はアルカトラスに入ろうとしたけど、雑魚過ぎて断られたんだ」 「えぇー、断られることなんてあるんだ。酷いね」 「そりゃあ、レベル1のときだったからなー。 アルカトラスには氷堂みたいな一部良い人も居るけど、基本的には嫌な奴らの集まりだ。 それに入れたとしても、コキ使われて過労死する未来が見える。入らなくて正解だった」 燈良はいつも忙しそうにしている氷堂を思い浮かべる。幹部を立て、部下や委託を使い、自分は現場に出ている。 そして下っ端として働いていた江入夢羽だって苦労していた。 あんな生活は自分にはできないだろう。 「ハッキリ言って、俺のスタートがシルディアだったら絶対にシャングリラに入ってたと思う。あっ、レベル1でも入れてくれるならだけど。 でも、俺はそれよりも前に北条に出会った。俺は勝手に北条の生き方について行くことにしたんだ。非公認だけど」
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