6 壊れていく日々

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「君たちはどうして、ここにいるの? なぜ苦しいの?」  冬弥は優しく、その子に問いかける。  瞬間、脳裏を流れていく映像と単語の数々。  災害。  飢饉。  疫病。  因習。  人柱。  ああ、そうか。  そうだったんだね。  君たちは、犠牲になった子どもたちだったんだ。  本来、生け贄になった者は村のために人柱になったということで、丁寧に神のように祀る。だが、この子たちはそうではなかった。  そのせいで、きちんと浄化されていないのだ。だから、今でもこうして苦しみ、救いを求め生きる者に訴えかけ続けている。  慰めにと置かれた数々の地蔵も、形ばかりで意味がないものであった。  冬弥の目から涙が落ちる。  かわいそうに……つらかったね。まだこんなに小さいのに。  そして、僕たちのためにありがとう。  なのに、何もしてあげられなくてごめんね。僕には、君たちを安らかな場所へ導ける力はないんだ。  その時、手に握っていたピアスがかすかに光った。  そのピアスは龍樹が特別な力を込めたもの。
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