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「ま、待ってください、こ、心の準備が、」
「ここまでやっておいて今さら」
「この後のことは考えてなかったんです!」
「あのなぁ、いくらなんでもノープランすぎるだろ」
呆れた声とは裏腹に新堂さんもまだ顔と耳は赤くて、呼応するように私の体もさらに熱を上げる。
「…もしかして、本当にこういうの好きだったりしますか?」
「……黙秘」
これは玲央くんの言う通りの作戦勝ちなのかもしれない。
そう思うと恥ずかしいながらも嬉しくて、新堂さんの首に腕を回して抱きつくと、新堂さんも背中に手を回してくれた。
「泉」
短い沈黙のあと、吐息のかかる距離で新堂さんの声がする。
名前を呼ばれて目を合わせるとキスが落ちてきた。
舌を割り込ませてさらに深くなる。前にいきなりされたときは戸惑うばかりだったけれど、今は自分からも絡めてみる。舌先同士が擦れるのが気持ち良くて、でもだんだんと息が続かなくて頭がぼんやりとしてきた。
深くなるそれに待ったをかけたくて肩を押すも、私の力では敵わない。
頭を撫でて、頬を撫でて。
そうさせているのは新堂さんなのに、息が上がっていく私を宥めるように触れていく。
その手が背中から体の線をなぞったせいで、私は思わず唇を離した。
「し、新堂さん…っ」
少しだけキスをほどけるも、まだ唇が触れ合うくらいの距離。
明らかに濃くなった空気の中で熱の灯った瞳に見つめられて、息が止まりそうになる。
「したい」
「す、ストレート過ぎませんか…!?」
「仕方ないだろ、どんだけ待ったと思ってんだ」
今の私は新堂さんの上に跨って向き合うような体勢。
そのせいで、私には丈が長いはずのシャツも裾がまくれ上がってしまい、はしたなくさらけ出された脚は隠そうにも隠せていない。
追い打ちをかけるように新堂さんの手が内腿の柔らかい皮膚を撫で上げた瞬間、反射的に出そうになった拒絶の言葉――それを私は咄嗟に飲み込んだ。
―――だって、本当は。嫌じゃない。
大きく息を吐いてから、赤くなった顔を隠すように新堂さんの肩に頭を乗せる。
「わ、私もです…」
耳元でギリギリ聞こえるくらいのか細い声。
それでも十分伝わったようで、抱きしめる腕に力がこもったのが分かった。
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