神楽 佐官

 エブリスタに来てだいぶ経ちますが、今までこの作品はチラ見だけで敬遠していました。なにしろ、 『975ページ』  という大作。正直な話、ビビってました。  しかし、エブリスタに来て『傾世のカフカ』を読まないのはモグリだろうと思い読んでみると、これが入魂の力作。  濃厚な戦闘シーンと臨場感あふれる文章力については他の皆さまがすでに述べた通り。  なので個人的に勝手に思ったことを。  この『傾世のカフカ』という題名ですが。  カフカに『傾世』の力があるからこの題名なのですが、『傾城の美女』という言葉もあります。何にでも変身できるカフカは神秘的な女性という存在を具現化したキャラともいえます。実際に第6章の199Pの買い物に行く場面でカフカを、 『可愛いとか綺麗なんかでは言い表せない。  強いて言うならこれは妖艶というヤツだな』  と、書いています。  変幻自在に変身できるカフカは、幼馴染という枠から脱皮できない琴音とは、聖と俗、まったくの正反対のキャラクターといえます。  純粋なバトル小説という視点からみると、終盤にやや難がある。すっきりした話が好きな男の子とかは物足りなく感じてしまうかもしれません。  でも、これって月代も犠牲者ですから。  犠牲者っつうか、加害者でもあるんですが、どうも作者はこの月代というキャラクターにも愛情を注いでいるみたいですし、ラスボスにするわけにもいかないわけでしょう。  響也とカフカが光だとすると、月代と沙耶香は影ですから。  それにしても、水晶のナイフの如き感受性をもつ人がこれだけのパワーを持ち合わせていることは稀なことです。書籍化も納得がいきます。すげぇや。  素晴らしい作品をありがとうございました。  最後にくだらない余談ですが、どうも作者はこの響也という少年に理想の少年像を託しているんじゃないかと勝手に想像しています。
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