美森 萠

家庭に問題を抱え苦しむ翔生と、弁護士を目指す大学生の天海。 生きることに投げやりにも見える翔生を、天海は何故か放っておけず、家庭教師という役割を越えて、翔生に関わります。 孤独の中に生きる翔生にとって天海は、きっと一筋の希望の光だったでしょう。 一方天海は、翔生への想いの正体が一体何なのか。 使命感か、庇護欲か、それとも、それ以上のものなのか。 自分の気持ちがはっきりと掴めないまま、翔生の手を取ります。 そして、崩壊。 天海と翔生の仲を疑う父親の怒りが、天海ではなく全て翔生に向けられるのが見ていてつらかった。 父親は翔生自身ではなく、翔生の中に母親を見ていて、やりきれない気持ちを全て翔生にぶつけてしまう。 翔生と、きっとやり直したい気持ちもあるのでしょう。 でも、どうしても許すことができなくて。 未成年である以上、この後もずっと父親と対峙していかなくてはならない翔生のことを思うと、胸が痛みます。 天海のしたことは、鳥籠から出ることの出来ない小鳥の羽をもいでしまったようなもの。 最後に天海に向けた翔生の言葉が忘れられません。 でも、罪の意識に苦しむ天海に気づいたことがあるように、翔生の人生に光が射さないわけではない。 苦しみに耐える道を選んだ翔生が、自分を諦めなければ、いつかその場所から飛び立てる。 三年後姿を現した翔生が、あの頃よりも幸せであることを、私も願わずにはいられませんでした。
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美森さん、レビューありがとうございます。もう、まさしく、こういう話だって纏めて頂きました!よくぞここまで読み込んで下さった。もう思い残すことはありません(笑)。 3年後に天海が見た翔生が幸せかどうか。それはまた書くつもりですが、鳥籠から逃げる日はそう遠くはないのかも知れません。
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