シヴ

遥か昔……邪悪な大魔王が現れ、世界を闇が覆った……。 かつて無い緊急事態を前に、人類の王は臣下に言った。 「選ばれし者を探せ。探すのだ。世界を救う勇者を……!」 その命を受けてすぐ、臣下は王宮から世界各地へと飛んだ。ある者は飛行機で。ある者は電車で、はたまたある者はスケートボードです。 臣下達は探し回る。南アフリカ、ケニア、コートジボワール、アルジェリア、レソト、ルワンダ、リベリア、リビア、モロッコ、モザンビーク、南コンゴ共和国、ンジャメナ、マダガスカル、トーゴ、ナイジェリア……。 しかし、それだけ探しても選ばれし勇者を見つける事はできなかった。 世界の、地球のどこかに存在するはずの選ばれし勇者。 探している範囲が範囲なだけに見つからないのも頷ける。飛行機とは一体何だったのか。 結局、臣下達は行く先行く先で魔王の手先に襲われ、ついには一人の臣下を残して全員が殺されてしまった。 そして最後の臣下も魔王の配下に襲われ、力尽きようとした時奇跡的にその者は現れた。 颯爽と現れたその者は腰に差した独特な形状の剣を引き抜くと、魔王の配下達をバッタバッタと大立ち回りで薙ぎ倒し、ついにはその場にいた敵を全滅させた。 臣下は最後の力を振り絞り、その者に告げる。 「おお、貴方こそ伝説の勇者に違いない。どうか、どうか魔王を倒して世界を……」 膝をつき、屈んだその者は言う。 「スマヌ。拙者には貴様らの言葉が分からんのでござる。さらば」 そう言って立ち去るゴザル。臣下の最後の表情はとても安らかだったという……。 ちなみにゴザルはその数時間後、日本行きの船に乗ってアフリカ大陸を去った。 結局、魔王は老衰で死んだので世界に平和は戻った。 これはそんなクソみたいな展開の小説を書くのが大好きな残念な青年の家の隣に住んでいる超可愛らしいマジ天使な少女のお話である……。

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