「──で、悟猿兄。あんなところで何してたの? 風邪引いちゃうよ?」  よっぽど寒かったのか、タオルで身体を拭いた後、毛布で身を包み雪だるまの様になっている悟猿を、仁花が呆れた目で見る。 「おぉ、心配をしてくれるなんてやっぱり仁花は優しいなぁ。悟猿兄ちゃんは嬉しいぞっ!」  ぞっ!、のとき悟猿はカワイイ風に振る舞っているつもりなのか、ウインクしながら顔を少し傾けた。しかし見ている者にとってはかなり痛々しく、仁花の背筋はゾッと凍った。 「悟猿兄の心配なんてしてないから。ただ風邪でも引いてそのせいで二浪したら悟猿兄のママとパパが居たたまれないって思っただけから。」  仁花の視線は窓から見える雪よりも冷たく、氷柱のように悟猿を突き刺していた。 「ふっ……。仁花、我が幼馴染みにして恐ろしい奴よぉ……っ! ならば此方も本気の力を解放す──」 「そういうのいいから。」  勢い良く立ち上がり、右目に手を翳した厨二モード全開の悟猿に冷静に突っ込みを入れると、少しションボリしていた。 「……それで?」 「へっ?」  先程の会話を忘れて自分の世界に入っていた悟猿は、思わず素っ頓狂な声を上げた。数秒間、仁花にジト目をされて漸く最初の質問を思い出した悟猿は、毛布を被り直した。 「そうだな。あれは──」

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