仁花が困惑の表情を浮かべ続ける中、悟猿はそれを気にせずにブツブツと確かめるように独り言を呟いている。 「仁花!」 「ひゃい!」  色んな事が頭の中でグルグルと駆け巡り、現実から離れていくような感覚に陥った。そのとき、突然の悟猿の呼び掛けにより現実に引き戻された。その際、吃驚して変な返事になってしまったため、もう既にまた現実から目を背けたくなった。 「お前、確か絵を描くの上手だったよな?」 「……へ? え、えぇと、上手かどうかは分からないけど、絵を描くのは好きだよ?」  予想していた質問とは違っていたので、少し間抜けた返事になってしまった。質問の意図はよく分からないが、取り合えず素直な意見を述べた。 「……そうか、よし、やっぱりイケる。これはイケるぞ!」  うぉぉぉ! と悟猿が謎の雄叫びを上げると、仁花は残念な人を見るような目で見つめた。 「いいか、仁花。意外かもしれないが、俺はコミュ障なんだ!」 「うん、知ってるよ」 「それにお前も、人前で話すのは苦手な方だろ?」 「う、うん」 「でも、さっきのやつは得意そうだった!」 「……えぇと、話が読めないんだけど……」  話がさっぱり解らなくて戸惑う仁花に、悟猿は力強い目で訴えた。 「作るんだよ! 俺達3人で、同人誌を!」  これは、個性豊かな三人組が、1つの作品を作り上げるまでの物語。

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