清瀬 美月

多数さんはね、―――。 ゆゑきゅん部のメンバー複数名(二名)に、それはもうぐいぐいぐいっとお薦めされて初めて読ませていただいたのがイベントの作品だったと思います。 たくさんの伏線がばらまかれていて、そこに近寄っちゃダメだとわかっていながら美しい疑似餌に食らいついてしまう。 細くて鋭い針に掛かりながらも気づかずに、いつのまにか胸の奥に広がる切なさの如く、読了後はその余韻に浸りたい……多数さんの作品は私の中でそういった印象でした。 そんな多数さんの、きゅん。 ペアは遠藤さや氏(ゆゑきゅん部部長!)しかもお二人のプロフィールを読む限り王道ものではないですかっ。 そしてバレンタイン編ということは先攻!! いったいどんなきゅんで痺れさせてもらえるんだろうと、とても楽しみにしていたのです。 立ち飲み処「イッパイヤッテナ」の冒頭シーン。 美味しそうな描写に可愛らしい一二三ちゃんのイリュージョン。微笑ましいシーンから一気に緊張感が走る流れにぐいぐいと引き込まれながら。 六三四くんとのきゅんよりも先、刺客の登場にもう、私はまたもや一気に釣り上げられてしまいました。 お互いのことを大切に想う気持ちに誤差はあれども、思春期の頃の純粋な想いがとても新鮮に描かれている半面、胸の奥に密かに抱えている闇の部分が愛しくて、優しくて、切なくて。 六三四、漢!! 読み進めていくうちに明かされていく展開にきゅんと胸に痛みを感じました。 二人だけではなく、登場人物それぞれに魅力があるのも素敵です。 香さんの言葉は深く展開の鍵となるのですが、ラストに向かっていく流れの中で、ページを何度も往復しながら、この世界観にしっとりと入り込んでしまいました。 というか、抜け出したくなかった。 甘くて切ない、きゅんのたくさん詰まった作品です。ホワイトデー編へと続く余韻を残したラストもまた大好きです。 ありがとうございました。
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