加賀山かがり

比較的癖の少ない文体が読みやすく、そうめんの様につるりと流れるように読み終えることが出来ました。 恐らくそれがこの作品の最大の長所であると思います。 このお話、要点をまとめれば 『気に喰わない奴を陥れてほくそえんでいた性悪女が鬼に落ちた』 となるのでしょうか。 そこには必然性も物語性も存在しません。 演出や作劇を考えるのであれば、主人公が酷く醜い鬼へと落ち、当然の報いの様に祓われる。 そう言った落としどころが必要かと思えます。少なくとも私が同じ物語を作るのならばそうします。 また被害者の少女は人望が厚い優等生という触れ込みのはずなのに、 どうやらその取り柄は十割容姿に依存していたという現実は目も当てられません。 真に優しく人望の厚い優等生ならば皮膚を焼かれた程度で明らかな手の平返しを食らうこともないでしょう。 そういった意味でこのお話は酷く主人公びいきな世界をしていると断じざるを得ないです。 この場面はむしろ、 『麗しい顔を失ったのに同情される被害者に主人公が業を煮やす』 という溜めに使ったほうが効果的だったのではないか、と私は考えます。 しかして、仮にこの物語が 『非のない優等生の足を愚図な主人公が引っ張って蹴落とすことで爽快感を得る』 為の物語であったのならば、上記の指摘は全て的外れなモノなことでしょう。 そういうための物語であるならば主人公の劣等感を読者の共感を煽る強烈なフックとして重点的に描写したほうがより効果的かと思います。 ただしどちらの場合においても共通することが一つだけあります。 それは最終的には主人公が報いを受けなければならない、ということです。 もちろん、作品冒頭で鬼になるという転落を経てはいます。 だけれどそれだけでは片手落ち、少なくとも私はそう感じます。 ただ私欲の為に独善的な振る舞いをしたキャラクタは本人がしでかした以上の報いをもって処理される、そうでなければ釣り合いが取れません。 偉そうなことを長々と書きました。 的外れだと思うところは無視していただいて、もし参考になるようであれば次の作品がよりよいモノに仕上がりますよう、お祈り申し上げます。
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