毎月決まった日に届く「知らない人」からの贈り物。高価な品物、便箋に綴られた整った文字。使うことも、かといって売ったり捨てたりすることも憚られるそれらは日常に少しずつ溜まっていく。 そして主人公は目の当たりにするのだ。 母と、「死んだ」と聞かされていた父と、父を愛して晩年を共に過ごした女性のそれぞれの愛のカタチ。無償の愛の、その重さを。 「半分、だそうです」 題名にもなっている、品物の贈り主である楓の言葉。その言葉の意味が、どこまでも切なくて、苦しい。 父と過ごす時間をもらったと彼女は言う。けれど心の方がきっとずっと欲しかったはずだ。罪悪感に苛まれた夜もあるだろう。それでも彼女は誰のことも責めない。 信じてあげられなかった母の後悔と、無念のまま亡くなった父の心残りが絡み合い、何とも言えないやりきれない切なさが胸に迫る。 誰が悪いわけでもない。母は母である前に女でもあって、父は優しすぎて、一番大切であるはずのものを手放さざるを得なかった。 男女の綻びなんて、最初のきっかけは小さなものなんだ。 主人公と彼との距離が簡単にほつれていったように。 無償の愛。美しく見えるその言葉が求める覚悟とその重たさが喉元に突きつけられたような気がします。 素敵な作品をありがとうございました。
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これね、一つ心残りがありまして… どこかで明確に、それでも楓さんに残した半分は、過ごした時間の中で育まれたものがあるからこそだというのを、母からの言葉なり心情描写なりで描くべきだったことを後悔しております(;_;)書き直せるなら書き直そうかも考えてはいますが… 無償の愛って、苦しいけどあるところにはあるものです。 覚悟を決めるタイミングなんてないままに、それでも捧げる人たちは、いつの間にか覚悟が決まっていたのかもしれません。 やっと、無償の愛のカタチが書けましたー。書いてみたかったんですよね。見返りを求めない人が、どんな苦しみの中でそれでも想い続けているのかって。 素敵なレビューありがと
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あ、言葉足らずですみません(´・ω・`) 楓さんがどこまでも穏やかで優しいのは、父とたくさんの時間を積み重ねたからこそで、彼女はその選択に少しも後悔してないこと。父と楓さんの間には、確かに彼らの間の絆があったんだと感じましたよー。 後半部分、全然気にならなかったです! むしろ明かされる真実と、登場人物の心情を思うとそのスピード感が心地良いくらい。 いやー、この作品。素子さんの思い入れがあるだけあって、本当にぐっときました。
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