ああ、読み終わってしまった。 6篇にも及ぶlimeさんの長編作品。 シリーズを通じて、作品に纏う雰囲気はどこまでも柔らかく、切なく、時に物悲しくも、優しい。 サイコメトリーの能力を持つ青年春樹と、その上司である美沙との物語。 ミステリーとしてのドキドキ感、春樹の友人隆也との青春劇。ストーリーはいくつもの側面を持つ。 けれど、番外編の「夏服のリルケ」から読み始めたせいなのか。全編を読み終えた時にまず感じたのは、「なんて、途方もない愛を扱ったストーリーなんだろう」という感慨でした。 サイコメトリーという能力は、都合よくスイッチのON/OFFが効くものではない。知りたくもない思念や事実。それらに蹂躙されながら、春樹は日常に傷つけられながら生きている。傷つけられているという事実すら、人に知られてはならない能力。それはまさに悲劇的ともいえるもので。 そんな春樹の能力を知りながら、寄り添う人物が二人。それが前述の隆也と美沙だ。 能力を知りながらもまっすぐに春樹と向き合う隆也の存在に救われながら、多くの読者、特に女性読者は美沙に感情移入していくことを避けられない。 美沙はどうしようもなく、春樹のことが好きなのだ。 けれど、触れられれば心を読まれてしまう。彼に決して知られてはいけない秘密を抱えているというのに。 お互いを思い合う不器用な二人が、互いを思うが故にすれ違っていく。そのすれ違いが、どこまでも切ない。 傷ついている春樹を抱きしめてあげたい、愛していると声高に叫びたい。そして、傷つく。頼りがいのある大人の男性に揺れる。女心。 読後は思わず深いため息をつきたくなる。 駆けて行った後ろ姿を眺めながら感じる風に似た、切なさの残る爽快感。 きっと今も、春樹は琥珀色の憂いを湛えながら生きている。雑踏の中で、あるいは古い雑居ビルの1角で。そして美沙は愛しいわが子の頭を撫でながら、ふとした拍子にその横顔を思い出すのだろう。 ああ、もう。ため息しかでない。 とても素敵な作品でした。ありがとうございました。
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またたびまるさん~(゚´Д`゚)゚ 春樹の本編を、全部読んでくれただけでも嬉しいのに、こんなに素敵なレビュー、もう涙なしでは読めません>< 一度書き終えてしまった物語は、ただの思い出になってしまうんですが、こうやって最初から読んでもらう事によって、もう一度春樹は蘇るんですね。 本当に嬉しい事です。 ヘタレで弱虫で、すぐ引きずってしまう春樹を、温かく見守ってくださったのが、すごく感じられます。 そしてまたたびまるさんは、「夏服のリルケ」から読み始めてくださった貴重な読者様。 14歳の春樹のシーンからこのシリーズは始まってたのですが、リルケを書いたのは最後だったので、これを最初に読むのと読まな
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とりとめのない長々としたレビュー(に、なっているといいな……)に素敵なお返事をありがとうございます! limeさんの、登場人物への深い愛情を感じる長編をしっかり堪能させていただきました。 レビューに書ききれなかったのですが、春樹と立場を異にする側(佐々木とか佐々木とか佐々木とか←好きw)にもしっかりそれぞれの理由があって、血が通っていることが感じられました。 純愛ですよー!!まさしく! 春樹も、美沙も、互いを思う気持ちがすごく伝わって、もどかしくて。もう…ばかっ!って思いながら(←)読みました( ;∀;) 読むの遅いですが、また作品にお邪魔しにうかがいますね☆
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