KAMATA

 読み始めると、これでもか! というほど美麗な登場人物たちに酔わされる。だが惑わされてはいけない。中身はとても骨太になっている。  巨額の遺産、山奥の洋館、招待状で集められた十二人、そして探偵。一見おなじみの設定に見えて、この作品は一線を画す。なにより、ゲームを別機軸にしているのが素晴らしい。普通は殺人が起きた時点で「誰も財産は貰えず、デスゲームに強制参加」と成り果てるのだが、この作品はそうならない。  金か復讐か愛情か、殺人を犯す程なのか、適当に参加しているのか……目的も、欲望の度合いも皆まちまち。だから最後まで目が離せない。多層構造で緻密な設定と、肉厚な登場人物たち、この妙が素晴らしい。  設定は緻密でも、複雑ではない。ゲームは「奪い合い」で分かりやすく、するする読める。しかも、念写などニヤリとさせられる要素もあり、幅広い読者層が楽しめる。本格ミステリとして、とても美味な逸品でした。
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