父と娘の切ない時間
この作者さんは、本当に家族の絆を描くのが上手いです。「しゃぼん玉」では、兄弟と祖母の、この作品では娘と父の。 一緒にいないから、友だちの情報も古い、娘が好きな飲み物も久しぶりに会う父は、疲れて太って老けて、理想のカッコいい父親像からはずいぶん劣化しています。少女は、きっと小さい頃「パパと結婚する!」って言ったはず。でも、そろそろ娘が父離れする年頃。でも、現実に離れてしまうのは本当に悲しい。 アイテムも秀逸です。 子供っぽいクリームソーダ、娘は幸せだった頃を思い出します。炭酸は、ちょっとキツイ気持ち、氷はいずれ溶けてなくなることから、父との別れを示唆します。溶けたアイスクリームをかき混ぜるのも、親子3人の暮らしを願う少女の気持ちが痛いほどわかります。 場面はファミレスだけ、人物はふたり。でも、いわゆるショートショートジャンルのアイロニーはなく、温かなヒューマンドラマの名作です。
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