美凪ましろ

トラウマと克服を描ききった見事な作品。
 一応クリエイターの端くれなので補足しますと。  トラウマやPTSDのたぐいを描写する際、  読者サイドは大概「うわっ」と思うみたいなんですが、  一方で、作者側は、読む側の百億倍以上強い痛みに耐えて生み出しております。  それが、創作というものです。 「辛いときに辛いものは読みたくない」側の論理も分かるのですが、  であれば、被害者にとってもそれは、同じ。  最初から被害に遭いたくて被害に遭う人間なんて皆無なわけですし、で、あれば、……痛みを共有するひとがいてもいいんじゃないかと。わたしはそう思います。  読む側の百億倍強い痛みに耐えて、この傑作を生みだしてくださった作者様にこころから、賛辞の言葉を送りたいと思います。  人間、生きていれば、徹底的に他者に痛めつけられる経験は、多かれ少なかれするもので。その『痛み』を知る側にとっては特に、『刺さる』、作品となっております。  いたずらにトラウマを告白させあうのではなく、回想シーンで読者が知れる、という作りもよかったと思います。  全部をカミングアウトするのがすべてではないですから。  でも、主役の二人は、内に秘めたものを、言葉にせずとも分かち合っていると思います。リズム。波長が合うんでしょうね。  名作は脇役も名役者だったりします。……風間くん。頑張ったね。  お茶の店主もご近所さんもよかった。  苦しみの中にも、きちんと、惹かれあうふたりの心理描写。見守るひとびとの言葉が、宝石のように輝いて見えました。    いろんなかたに読んでいただきたい作品です。  完結済み。微妙にネタバレですが、ハッピーエンドで終わる作品ですので、安心して読めます。  最後に。トラウマを真っ向から扱い、見事な作品として届けてくださった作者様に御礼を申し上げ、この感想を締めたいと思います。  素敵な作品を、ありがとうございました!!
10件

この投稿に対するコメントはありません