しのき美緒

プロは決してあきらめない
激レア職業「餅巾着職人」は朝から餅巾着の作成に余念がない。 朝のほの暗い台所で、リズミカルに動く指先、種類ごとに巾着が整然と大皿に並んでいく様子––この大皿は粉引かもしくは染付に違いない。餅に拘り揚げに拘る職人がよもやミッフィーちゃんやスヌーの皿を使うはずはないのである––、ひとつの餅巾着をつくるための具材へのこだわりから完成までが簡潔な文章に乗って浮かび上がってくる。 それなのに、ああそれなのに……。 愚民というのはどこにでもいるもので、このこだわりを全く理解せず世の中一般のとおりにやるのが尊いというのである。 餅巾着職人は苦悩の末、打開策を見出す。 ナイスアイディア!…… がしかし、職人にわたしから忠告したいことがある。 白だしを使わないと、黒い袋になっちゃうからね。 短編の名手だけあって、最後までどう転ぶかわからない作品にどきどきしました。
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