蜜原さんはエンターテイメントへの道を歩み始めたのか?
 蜜原さんの作品は、随分と読んできたが、所謂エンターテイメント系の作家と考えたことはなかった。  御自身はどう考えておられるか分からないが、間違いなく純文学系の作家であり、現代社会への懐疑、批判が根底にあるというのが私の意見である。  従って作品ストーリーだけなぞるとエンターテイメントなのだが、実際に読んでみればスラスラと最後まで読めるエンターテイメントとは明らかに一線を画し、作者の意図を探って何度も読み返さなければならなくなる。  ハッキリ云って難しいのである。敢えて申し上げるが、もしスラスラと何も考えずにラストまで一気読み出来るというなら、余程優れた読解力を持つ純文学作品の読み手か、蜜原さんの知己としての義務感から、とにかく表面だけなぞってサッサと読了したかのどちらかである。  万民受けする作家ではなく、どちらかと云えば少数だが熱烈な信奉者に囲まれたカリスマ的な存在というのが、蜜原さんの作品を通して受ける私のイメージである。  実を云えばこのシリーズも、最初の二作は明らかに、蜜原さんの作品イメージから大きく逸脱することはなかった。  今回の作品は『聖パルーシア学園』のお馴染みのメンバーが重装備で、ラーメン屋に昼食に行くというナンセンスストーリーである。モデルとなっているラーメン屋自体、マスコミを賑わせている店であり、読んでいてニヤリとさせられる。オタたちが生徒たちを追いかけるシーンも、地下アイドルを連想させて楽しい。  この店での昼食を巡るコミカルなやりとりが後半はガラリと雰囲気を変えアクションシーンとなり、新キャラも登場し、今後の展開につなげるストーリーとなって終了する。  総合的にみて蜜原さんの作品の中でも非常に分かりやすい内容となっている。行間を読み取る必要もなく、読者に提示された作品世界が等身大の作品世界なのである。  新キャラを巡る展開と今後を予想させるラストが、エンターテイメントの王道をなぞっているあたり、特にそう感じさせる。  今回の作品は、純粋にエンターテイメントの娯楽作品なのである。  正直、蜜原さんがここまで娯楽に徹した抜群に面白いエンターテイメントを発表するとは想定外の出来事だったし、このシリーズが今後、どう続いていくか非常に気になるところである。  結論から云えばこの作品は、娯楽性の高い良質のエンターテイメントの傑作である。  、  
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 倉橋さん丁寧な感想ありがとうございます!  個人的にはたしかに現代社会への懐疑などをかかえて書いているつもりなのですが、それを前面に出してはいないつもりです。  そして純文学系であるとも思ってなくて、古い言葉ですが、純文学とエンターテインメントを合わせた「中間小説」みたいなのを狙ってはおります。    あとは、難しいとしたらそれは全部わたしの文責なので……すみません💦  たしかにもともとマスにうける作品を書いているとは思ってなかったです。それは、もうなんていうんでしょうね、手癖というかそういうのが反時代的になってしまう。    聖《サント》パルーシア学園のシリーズである本作、これも意識せずに
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