○○解禁

4/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
妄コン「○○解禁」 https://estar.jp/official_contests/159697 【佳作】 『メメント・モリ』 仁科佐和子 様 題名になっている「メメント・モリ」の意味は、ご存じの方も多いとは思いますが、 「」という意味です。 これ、私が毎日、意識していることでもあります。 いつか訪れる死を意識すると、今を大切に生きれるんですよね。 私は、死ぬ直前で身動きが取れない状態からお願いをして健全に動き回れる自分に戻してもらったという設定で毎日を生きていますw 死ぬ直前の自分って、どうなっているんだろう? きっと、歩けないだろうな、自分の口で食べたり飲んだりできないんだろうな。 などなど、自分ができなくなっていることを想像します。 死ぬ直前で、あれをやっておけばよかった、などと後悔しないために今、何をしたらよいのか。 そればかり考えて生きています。 おっと、作品の感想ではなくて、私の生き方(メメントモリ)の話になってしまいました^^; ここから、感想を書いていきます。 舞台はホスピスです。 死が迫っている患者のための施設です。 もうすぐ死んでしまう我が子に、母が絵本を読み聞かせする場面から始まります。 窓の外から、ナイチンゲールの鳴き声が聞こえてきます。 坊やは興味津々ですが、母は忌み嫌います。 はい。 ここで、鳥のナイチンゲールについての知識があると、より深く物語が楽しめると思います。 人間のナイチンゲールといえば、クリミア戦争での負傷兵の看護に貢献し、看護学を確立した偉人を想像してしまうと思いますが、 この物語のナイチンゲールは、看護師ではなくて、のナイチンゲールです。 フリー写真サイトPexelsに載っていた、鳥のナイチンゲールがこちらです。 02f0127f-382f-4ba5-bf8b-0523701e1958 かわいいですね。 実際、西洋のウグイスとも呼ばれるくらいに鳴き声は美しいそうです。 作品中、ナイチンゲールの鳴き声が幾度も描かれており、とても印象的です。 私も実際の鳴き声を聞いてみたいと思い、動画を検索して聞いてしまいました^^; とってもいい鳴き声でしたよ。 さて、この物語では、鳥の「ナイチンゲール」への解釈が、坊やと母とで違っています。 これ、重要です。 母はこう思っています。 「ナイチンゲールは墓場鳥。夜に連れ込む死の鳥よ!」 そのため、夜に窓を開けさせません。 本当にそう呼ばれているのかな、と、これまた調べてみました。 すると、南ドイツの方でそういった言い伝えがあることがわかりました。 仁科佐和子さんは、以前にもドイツを舞台とした作品を書いて大賞を受賞されたことがある方です。 なるほど、今回もドイツを舞台にしたのですね。 一方、坊やはナイチンゲールが窓辺に来てくれるのをとても喜んでいます。 きっと、言い伝えを知らないのでしょう。 死を前にした坊やにとって、自由に空を飛べる鳥は、憧れの存在だったに違いありません。 歌いに来てくれるのも、とても嬉しかったのでしょう。 この後、ナイチンゲールになった坊やは、今まで一緒にいた羊のぬいぐるみ、メリーベルの正体を知ります。 母は母で、墓場鳥を撃ち殺しておけばよかったと後悔します。 今回の妄コンのテーマは「解禁」ですが、いったい何が解禁なのか。 それは、ナイチンゲールが持つ不思議な力の解禁でした。 子供たちは、母に再会し、そして、ナイチンゲールになって飛んでいきます。 ここで、読者は違和感を覚えるかも知れません。 母はナイチンゲールを墓場鳥と呼んで忌み嫌い、撃ち殺しておけばよかったとさえ言っています。 しかし、物語のラストで、子どもたちはナイチンゲールになります。 これは、南ドイツに伝わるナイチンゲールの伝説を知っていると、より深い解釈ができます。 ・病床にある病人にナイチンゲールは歌をうたいながらおだやかな死をもたらす。 ・窓をつついて異国で死んだ者のことを告げ、家の近くで鳴いて、その家の凶事を知らせる。 これらの伝説のため、ナイチンゲールは墓場鳥と呼ばれているのですが、意外と死神的なイメージばかりではなく、優しいイメージも感じられますよね。 ナイチンゲールには別の名前もあります。 それは、夜啼鳥(よなきどり)です。 ナイチンゲールという言葉には、「夜に歌う」という意味があり、それで日本語で夜啼鳥と訳されることもあるそうです。 厳密には「小夜啼鳥(サヨナキドリ)」と訳されています。 ナイチンゲールになった子供たちは、墓場鳥として鳴いているのではなく、夜啼鳥(よなきどり)として、母が一人ぼっちで悲しまないよう、自分たちの美しい鳴き声で心穏やかに眠れるよう、開けた窓辺にやってきては鳴く、という結末でした。 凶鳥だと思われていたナイチンゲールへの解釈が、読者によっては変わるかもしれません。 また、この物語に出てくる母も(子供が鳥になったという真相を知ることができれば、あるいは、知ることがないとしても)ナイチンゲールへの解釈が変わるかもしれません。 そのあたりは、オープンエンドとなっていて、作品には書かれていません。 母のこれからの思いを想像しながら、この物語の余韻にひたってみるのもいいかも知れませんね。 ステキな作品を読ませていただき、作者様には感謝感謝です。 次回も、妄コン「○○解禁」の感想文です。 お楽しみに!!
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!