葬儀関係のトータルソリューションを展開する会社に勤めている白坂。彼はトラウマに苦しむことすらできない程度に大人になってしまい、事なかれ主義で生きていた。ある日、白坂は同僚に厄介な専務の話をされ、ついそれに乗っかって悪口を言うと、当の本人である専務に聞かれてしまう。そして、辺境の奇妙な村に左遷されてしまい終わったと思っていたが、支店の前任者だと現れた男はなんと社長で――。胸に響くヒューマンミステリー。

貧困と育児放棄が原因で、親戚が営む孤児院に使用人として引き取れられた少女・アンジェリークこと、アンジュ。15歳になったアンジュは高貴な身分の少年フィリップに恋をするも叶うことはなかったが、彼からその歌声を褒められ、自分の思うように生きてほしいといわれる。その後、アンジュは歌声がきっかけでロンドンの「ワーグナー楽団」に入ることになる。恋愛を主軸に喪失と再生を描いたヒューマンヒストリカルロマンス。

藤沢ネロは軽度の知的障害と自閉症を持ちながら、心やさしく素直に育った。過去に暴走族のナンバー1だった営業マンの弟・藤沢賢は、短気な性格ゆえに時折怒り狂いながら兄を支えて暮らしている。そんなある日、ネロが街一番の豪邸と名高い安藤邸で家政夫として働かせてもらえることになる。暖かい周囲の人々に囲まれて、友情を育んだり恋をしたり日常を歩んでいく――。心に問いかけてくる家族のヒューマンドラマ。

昭和13年、魚守結は海辺の村に母親と二人で暮らしていた。綺麗で優しい母親や暖かい村の人たちに囲まれて毎日が楽しくて幸せだった。やがて結が14歳になった時、出稼ぎに行っていた幼なじみ・圭佑が帰ってくる。兄のように慕っていた彼を意識するようになり、結は胸を焼くような初めての恋心を知る。いつまでも変わらない姿である母に嫉妬するようになり……。八百比丘尼と呼ばれた女の娘の切甘ファンタジー。

女子高生の佐野由香里は、同級生と過ごす当たり前の日々に違和感を抱えて過ごしていた。見えないヒエラルキーのために友達を持つことに疲れ、閉塞感と絶望感を覚える。そんな中、学年のリーダー的存在である石崎友美から忌み嫌われている倉持咲が由香里に近づいてきた。咲との距離が近づくにつれ、3人の関係を変えたいと思うようになる。しかし突然、咲は血のついたナイフを由香里に突きつけ――。人の心の脆さを描いた青春サスペンス。

珍しく雪が降った日。菜々は幼なじみの遥生と普段通りに高校へ向かっていた。二人は付き合っているのではないかと疑われるほど仲が良く、遥生を密かに好いている菜々にとってその噂は嬉しいものだった。ところが、その矢先に二人は交通事故に遭ってしまう。病院で目を覚ました菜々は、遥生が彼女を庇って意識不明の重体であることを知る。そんな時、未来からきた遥生と名乗る青年が菜々の前に現れて――!?　切ない青春ラブ。

突如として発生した世界規模の崩壊劇「終末的破局」から40年。生き残った人類は襲い来る"死"から逃れようと科学技術を発展させ、不死の存在へと生まれ変わっていた。心臓が鼓動を止めたとしても、蓄積された意識と記憶はパブリッククラウド上に保存され、新たな肉体へと転送される。人類は合理的社会によって楽園を手に入れるが、「わたし」はそこに居場所が無いと感じ消えてしまおうとする。しかし、失敗して隔離施設に放り込まれ――。近未来のシリアスSF。

死に場所を探していた夏樹は、月の綺麗な幻想的な風景を独り占めにして死ぬことを決めていたが、そこには先客がいた。彼女の名前は夏希といい、ふたりは同じ読みの名前だった。余命一か月と宣告されている夏希の、「絵を描きたい」という望みを叶えてあげたいという気持ちから、夏樹はしばらくの間生き続けることを決める。絵が完成間近になったころ、思い出の場所に現れたのは彼女ではなく――。心に沁みる優しい純愛物語。

のどかな田園風景が広がる辺境に暮らしている伯爵令嬢・ヒルダ。ひとり娘として大切に育てられた彼女は、爵位を持たない同い年の少年・ルドルフに好意を寄せていた。しかしある日、彼を好きな少女の陰謀でヒルダは大怪我を負わされ傷物になってしまう。誰にも嫁ぐことが出来なくなった彼女を、両親は強引にルドルフと婚約させ責任を取らせようとする。しかしヒルダはその事実を知ってしまい――。幸薄ヒロインの壮絶なラブファンタジー。

孤児院で育ったアマリアは、3年前から港町ポルトで香薬屋を営んでいる。ある日、アマリアが香薬師協会の本部に赴くと、会長から「私は君の実の父親だ」と告白される。しかし彼女は、父親代わりの後見人・ルイシュを慕っており、今更信じられる訳がなかった。さらにアマリアは王宮護衛隊エースの幼なじみから求婚されてしまう。その背後には薄幸の姉妹と、不治の病に苦しむ女教皇の影がちらついていて――。ロマンスファンタジー。