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コンビニ《ナイトナイト》の冬

小説 ホラー・オカルト

コンビニ《ナイトナイト》の冬

コンビニ《ナイトナイト》の冬

NBjr

去年の秋口から、都内では妙な事件が多発している。街角でそわそわする人が増えた。

休載中

19ページ

更新:2014/01/15

説明



先日私は、都心の三条尻手(さんじょうしって)という所にあるコンビニエンスストアで、不思議な体験をした。

夜の8時を回った頃だったと思うが、手に持った缶コーヒーをレジのカウンターに置いた私は、どう仕様もなく気分が悪くなった。

カウンターの奥には、半月形の目をした無愛想な少年が立っている。

その目玉を見た私はますます気分が悪くなって、あろう事かカウンターに置いたコーヒー目掛けて、胃袋の中の物全てを吐いてしまった。

私は仕事にも家庭にも疲れ果てていた。

そんな私の腹の中から出て来た吐瀉物(としゃぶつ)は、アメーバの様にうにうにと動く不快な物体である。

慌てた私が、あたふたとその緑色の吐瀉物を両手で始末しようとする姿を、微動だにせず見つめていた少年の半月目玉の冷たさを、私は今もはっきりと覚えている。

胸のバッチには、七尾玉虫とある。

低い鼻の周りはソバカスだらけで、身長は私よりもはるかに低いのだが、七尾の存在は高圧的で、明らかに私を見下している。

「アンタ、もう少ししっかりしなよ」

七尾が私に対して、唯一言った言葉がそれ。

そして、その場所での私の記憶もそこまでである。

おそらく私は、七尾の言葉を聞いて直ぐに、気を失ったのだろう。

気が付いた時には、周りを高層ビルに取り囲まれた公園のベンチで寝ていた。

私の視界一杯に、夜の空へ伸びるビルの灯り。

それ等は皆、白々しく、薄情で、私を含むその場所全てに背中を向けている感があった。


「暗い気持ちを溜め込み過ぎるとね〈その他の部類〉が、あなたを食べてしまうわ。さっきの部類は玉虫クンが始末したから、あなたはもう少し日向的に生きなきゃ」

茶色の髪の毛を2つに束ねた女の子が、ベンチの脇に立っている。

「今日の事は内緒だからね」


女の子は七尾と同じピンク色の上着を着ていた。

左の胸には、ナイトナイトと片仮名の刺繍がある。

聞いた事の無い名前の店だ。

その時はもう身体が軽くなっていた私は、思わず笑ってしまった。

けれども女の子は笑わない。

氷の様な表情を崩さず、私に背中を向けた。


公園の名は〈蝦蟇の穂〉である。

後で知った事なのだが、100年ほど前は、誰も近付く事の無い、底なし沼であったらしい。

口伝である。

史書にその地名は、載っていない。

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