杉宮海翔

まず『折り紙』という着眼点に脱帽した。普通なら「折り紙で話を膨らませるなんて」と思うかも知れない。 でも作者はそれを巧みに表現している。『紙』という言葉を使った比喩表現や、極限まで選び抜いた様な心理描写も秀逸である。 無駄の無い洗練された書き方だと素直に評価するしかない程に、丁寧に磨かれた作品と言えよう。 何より三行以内にまとめられた一文。それごとに行間を空ける事で、読み辛さによる息苦しさや出鼻を挫くという事を無くしている。 後は簡単な漢字を使用している事だろうか。名前にフリガナを振っている事以外は、見習うべき非常に良い工夫だと感じた。 で、感想を少し。 小説で必須となる掴みを分かりやすく、かつ気分悪さを感じる事無く読めたのが読者として嬉しかった。 短編はいかに登場人物に感情移入、または共感出来るかが腕の見せ所だと常に考えているが、折り紙による独自の世界を見せてくれた事が素晴らしかった。 登場人物に青臭さや人間味、使命感や向上心が見えた事も、一つの奇妙な青春としての面白さがあった事も感動した。 ま、個人的にあんな感じの青春物もアリじゃねぇかな?ただ悲しい訳じゃなく、そこには願いがある。 折り紙は誰かへの祈りを籠めて折るもんだって認識の俺にはピッタリ合ったよ。
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