白羽莉子

 くるしいよ。  奈子がそう言った気がした。  病は奈子の体中で暴れまわっている。治療も虚しく痩せ細り、ここ最近に至っては眠り続ける奈子。私は彼女のもとに毎日いるというのに、どうしても見るのが恐ろしい。  もう、楽にしてあげませんか?  さっき聴いた医者の声。昏々と眠り続ける様子を見て、医者は無理だと思ったのだろう。この子には治る見込みはないだろう、と。一度は拒否したが、今回は何も言えなかった。もしかしたらもう一度目を覚ましてくれるかもしれない。淡い期待だということは分かっていた。それでも、待ち望みたかった。  うつらうつらとしていたら、何かが触れた気がした。驚いて顔を上げる。 「おねえちゃん」  奈子の声だった。ぼうっとした頭が急に動き出す。夢ではないか、と。ところが違うらしい。血の気のない奈子が身体中の力を振り絞るようにして声を出している。 「私はもう大丈夫だよ。ごめんね」 「何が大丈夫、よ。一月も眠っておいて!」 「そんなに?」 「そんなに!」  奈子が笑った。この笑顔を見たのはいつぶりだろうか。 「私ね。天使に会ったの。そしてね、生きたいかそうじゃないか選べって言われた。悩んだんだけど、しにたいなんて言えなかったからね、生きるって言ったんだ」  奈子の笑顔が、声が、嬉しかった。自らの意思で死の縁から帰ってきた奈子に感謝したかった。でも、私にはどうしてもその喜びを上手く表現出来なかった。 「ばか」  涙が頬を伝った。
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読み返すと、残念すぎる。 リアルな立場、奈子な私です。まあ、健康体ですが、この間までかなり大きな問題を抱えていたのです。で、はきたいなあとか思っていたらこんな感じの物語になりました。 うへええええ。
 読んだらなんだか心がきゅってなります。きちんと死にまつわる所が平仮名だったり、見ていてとても感情移入しました。  白羽さん。私生活が大変だったんですね。最後まで読んでもっと心が締め付けられたというか、実体験をここまで鮮明に描ける文章力が心に打たれました。  なんて声をかけたらいいか分からないけれど、(こんな私が)お疲れさまです。と、コメントして通りますよ。
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ま、部活をやるかやめるか悩んでただけですけどね(笑) ちなみに、しにたいは変換ミスなのです\(^o^)/
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