たすう存在

独白形式のテンポが良く、でもそれでいて決して軽すぎない描写で、サクサク読めるのにじっくりと恐怖がせりあがってくる作品でした。 冒頭のタバコを買い忘れてガマンするという台詞がどことなく人里離れた場所に出かけていることと、対話しながらタバコが吸える状況=車中であることを、説明せずに連想させているのが巧いなあと感心させられました。 狙ってのことなのかは分かりませんが、独白ふうを装って対話であることを忘れさせつつ実は対話相手の立ち位置が重要だった、という流れの意外性が面白いです。 ただその場合は個人的には、「あなたも最近彼女できたんでしょ?」の台詞がない方が良かったかなという気もします(僕はここでその先の流れが分かってしまったので)。 またボタンへの拘りがその後の殺害に絡められるとより異常性を演出できたかも知れません。 彼と主人公、彼と浮気相手、それから主人公と浮気相手の知り合った時期と、浮気現場の目撃した時期を考えると、実はこの浮気相手はけっこう酷い女だったのかな、とも思ったりします。 何にしても、主人公が前向きになれて良かったですね。 ところで、相手の男に家庭がありそうな感じを持たせているのはミスディレクションなのでしょうか?
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