桜海 とあ

辛口とのことですが、素人なりに感じた感想をお伝えします。 作品の瑞々しさと終始爽やかな雰囲気を醸しだす文体。 伏線の張り方も秀逸で、ラストにストンと落とす仕掛けもあり、大人の作品にひけを取らない作りに、最後の一行まで楽しませていただきました。 しかしながら、描写が薄いせいで、 物語として単調に終ってしまっているのが、非常に勿体無い。 読み手は、小説の世界を直接見ることは出来ない。 書き手が描いた文章を頼りに想像し、物語の世界を再構築していくので、描かれていない部分を補足しながら読み進めると、物語に揺れが生まれる。 其の揺れを小さくするために、正しく伝えること。 視点のタイムラグを出さないことが重要かと思う。 例えば、 ”私も彼のとなりに座り、クルミの身体を撫でる。 「おいおい、服汚れんぞ」” 汚れる、といった理由。 彼女の服装についての描写はない。 裾が地面につきそうなほどに長い真っ白なスカートだったのか、 彼女の下に、水溜りがあったからなのか。 クルミの身体が汚れていると彼が感じており、撫でることで彼女が汚れると懸念したのか。 これが判るのは、 其の後の、「綺麗な服...」という彼の言葉で、沁み一つ無い真っ白なワンピースやよそ行きの格好なのかな?と、読み手は想像する。 また、 ”「私の家すぐ其処だから」に「マジ?」!と驚く少年”も、彼女が指差した先の描写は無い。 おんぼろアパートか、 近所でも怖いと有名なおじさんの家なのか。 其の後の「おまえんち広いし」発言で、豪邸なのかな?と想像する。 「マジ?」と驚いた時に、読み手も同じ視点に立ち、一緒に驚くことが出来ない。 タイムラグの発生を失くすためにも、状況描写は書かれた方がより書き手の思い描く世界を鮮明に相手に伝えることが出来、読者を小説の世界へと引きこめるはず。 あえて描写を制限する手法もあるが、それはプラスアルファ部分であり、ベースは書き手が誘導したほうがいいと思う。 当たり前ですが、作品の世界は作者にしか創れない。創造することは作者の特権であり、書き手の楽しみでもあるので、無駄にせず、主人公達の居る世界を、よりリアルな空間へと導いてあげて欲しいですね。 しかしながら、 若干12歳でこの作品は、凄い。 今後の活躍、大いに期待してます。 桜海 とあ

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